NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

村井 将

村井 将

チェロ

むらい・ゆき

東京都出身。1991年東京藝術大学を卒業。在学中に第56回日本音楽コンクール第2位入賞、学内において野村賞受賞。1992~1997年神戸市室内合奏団首席奏者、1997年~新星日本交響楽団首席、2000~2003年は合併のため東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者を務めた。これまでにチェロを塚原みどり、井上頼豊、堀江泰、レーヌ・フラショー、堀了介の各氏に師事。2005年7月1日入団。チェロ奏者。

 

チェロを職業にできて幸せです

華恵

最初にチェロに触れるきっかけは?

 

村井

父がクラシックギターを趣味で弾いていまして、息子にもやらせたいと思ったのでしょう。小学校1年生のときに僕も始めたんです。でもギターの世界は狭く感じて、それに父の指導が厳しかったので逃れたい気持ちもあって、オーケストラにある楽器、特にヴァイオリンをやりたいと思いました。でももう小学校2年か3年生になっていましたからチェロのほうがよいだろうということになりました。

 

華恵

ギターからチェロへの移行はスムーズでした?

 

村井

親から離れたいということからチェロに移りましたが、ちょうど楽器の大きさも似通っていたので意外にすんなりと移りました。自分の強い意志で選んだわけではなかったです。

 

華恵

チェロはすぐに好きになりましたか?

 

村井

一番最初についた先生がとても優しくて素敵な先生だったのでチェロっていいなと思えたのは幸運でした。その後も先生に恵まれ、嫌いになることもなく続けました。

 

華恵

チェロの演奏家として仕事をしていきたいと意識したのはいつ頃ですか?

 

村井

中学生ぐらいでしょうか。チェロを弾くことが職業にできたらばいいなと思い始めました。幸運にもそれが実現して幸せです。

 

華恵

演奏家になってから 、音楽観は変わりましたか?

 

村井

発見が多かったです。最初はソロを勉強していて、大学の時は小さな室内楽をよくやりまして、卒業してからすぐに神戸の室内の合奏団に呼んでいただいて少し大きな規模の弦楽合奏団で演奏しました。それから東京のオーケストラに呼んでいただいて、そこではオペラやバレエの演奏が多かったので、また全然違う世界を経験しました。N響に来てからは交響曲が多いですから、次々に新しい世界が展開してきました。

 

華恵

様々な音楽環境をご体験されたんですね。

 

村井

チェロを職業にすることができたこと自体がとてもありがたかったですね。もし一つのオーケストラでずっとやっていたら20年になったくらいでしょうけれど、職場はさっき言ったようにいろいろと変わったんですけれども、チェロをずっと弾いてこれたことが喜びです。

 

 

ツーショット写真

 

華恵

ではご自分の音楽の個性はどういうふうに表現されていますか?

 

村井

まだそこまで自分が確立しているわけじゃないので分からないです。オーケストラの演奏では、ひとりひとりの指揮者の考えによって音楽観が全く違うので、まずマエストロがどういうふうに思っているかを汲み取ることが大切だと思っています。

 

華恵

アンサンブルで担う役割として、周りの意見を汲み取るタイプの方のようですね。

 

村井

昔は正反対だったんです。

 

華恵

そうなんですか?

 

村井

自分自身のことはあまり見えないものですよね。安易にいろいろな意見を口に出してしまって、本当に自分の言いたいことのニュアンスをうまく伝えられずに、うまくアンサンブルが行かないようなこともありましたから。指揮者を見ていても思います。いろいろなタイプの指揮者がいらっしゃり、言葉で音楽を説明される指揮者もいらっしゃいますが、ほとんど言葉では説明しないのに、音楽の向かう先をすべて伝えられる指揮者もいらっしゃるんですね。言葉にして説明してくれたからといってオーケストラの全員が納得できるわけじゃなくて、言葉によって必ずしもいい方向へ行くとは限らないように感じます。音楽はやはり音を出した時に、思いがみんなに伝わっていけばいいと思うんですね。

 

華恵

いつ頃そういう考え方になりましたか?

 

村井

若気の至りで学生のころはかなり主張をしたり、カルテットで活動している時や、オーケストラに入ってからも説き伏せることのほうが正しいと思っていた時期がありました。そうしても音楽が全然良くはならないということが分かったので、徐々に考えが変わっていきました。

 

華恵

今演奏の上で一番大切にされていることは何でしょう。

 

村井

聴きにいらしているお客様に、その音楽の本質をしっかりと伝えることができたらいいなと思っています…… 難しいことですが。とにかく今は、オーケストラをやれることそのものが楽しいので、とても満足しています。

 

写真撮影 ― 藤本史昭

2012年11月取材 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。