NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

宇根京子

宇根京子

ヴァイオリン

うね・きょうこ

桐朋学園大学・同大学研究科修了後、2003年3月よりヴィンタートゥール・チューリヒ音楽大学留学。2006年4月1日N響入団。

 

髙橋

入団なさって約1年半を振り返ってみてどのような感想をお持ちですか?

 

宇根

慌ただしいというか、譜読みに追われてはいますが、想像以上に楽しいです。

 

髙橋

そのなかでも印象深い演奏会は?

 

宇根

マエストロ・デュトワのもとでのサン・サーンスや《アレクサンドル・ネフスキー》です。

 

髙橋

デュトワさんは細かく指示を出される方ですか?

 

宇根

音色などにこだわりのある部分では出されます。たとえば、ご自身が想定した和音の響きが得られなかったのだと思いますが、「音程が悪く聞こえる理由にはバランスの問題がある」ということをオケで学ぶことができました。和音の第3音を強めたり弱めたり、根音とのデュナーミクや音色のバランスが音程の印象に与える影響が大きいということなどを思い出し、実際にオケのなかで高めることができる機会に出会えました。

 

髙橋

そのような微妙な差異を、100人以上の方が周りとのバランスのなかで作り出すなんて、たいへんな作業だと思います。

 

宇根

私はあまり、オーケストラのなかで弾く勉強をしてこなかった方かもしれません。p1つをとってみても、1人で出すpとはちがいますし、単に自身で感じる小さな音を出せば良いというわけではないということなど、一歩一歩学んでいるという感じです。弾く位置も、今は中ほどのプルトなのですが、最初は後ろの方で弾いていました。少しの距離座る位置が変わっただけで、音を出すタイミングが変わってきました。後ろの方には前列の音は聞こえにくいので、コンサートマスターを見ますが、時と場合によっては、コンサートマスターは先へ先へと合図を出して行きますので、それにピタッとつけているとずれが生じてしまいます。いちばん後ろのプルトから弾く場合と、後ろの音も聞こえる中間の位置で弾く場合では、何かちがうと感じてはいましたが、タイミングのことを先輩方に言葉で教えて頂き、理解しました。今は、やっと周りが“聞こえてきた”と思ったら本番に突入しなければならないという段階です。瞬時の判断力をもっと持ちたいです。
でも、ソロでステージに上がって、やってきたものを100%発揮できた場合の感激も大きいのですが、オケでは100%の感激が200%に感じられるほど大きなパワーに包まれます。1つになって動くときの感覚は何とも言い難い幸福感です。

 

髙橋

指揮者によってオーケストラから紡ぎ出される響きが異なるのも、聴く側にとっては楽しみの1つですが、逆に演奏家は毎回対応というか反応しなければならないわけですよね?

 

宇根

指揮者の人柄によってすーっと反応できるのが不思議です。マエストロ・ブロムシュテットは敬愛を集めるお人柄で、自然とついて行きたくなります。外観どおり、紡ぎ出す音楽からも誠実さが伝わってきます。

 

髙橋

弦楽四重奏の活動もなさっていらっしゃいますが、オーケストラでの音楽作りから還元されているものはありますか?

 

宇根

より相手の音を聴く、聴けるようになった点です。数年前に結成した弦楽四重奏団は、年に1度のコンサートがあるくらいで、開店休業中状態なのですが。

 

髙橋

ガーデニングが趣味とお聞きしましたが。

 

宇根

ガーデニングというよりも、小さいスペースでお野菜などを育てる園芸です(笑)。もちろんお花も好きですけれどね。土いじりをすると、心が落ち着く気がするのです。昨年はブロッコリー、カリフラワー、ピーマンなどを収穫しました。

 

髙橋

わー、うらやましい。もちろん召し上がったのでしょう?

 

宇根

はい。無農薬なのが嬉しいです(笑)。

 

写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2008年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。「美の壺」「日本の伝統芸能」等や、「探検ロマン世界遺産」リポーターとしても活躍。