NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

井川 明彦

井川 明彦

トランペット

いかわ・あきひこ

愛媛県出身。国立音楽大学卒業と同時に神奈川フィルハーモニー管弦楽団入団。1989年東京フィルハーモニー交響楽団に移籍。1991年東京都交響楽団に移籍、1992年から首席に。1994年1月1日N響入団。国立音楽大学非常勤講師も勤める。

 

髙橋

いつからトランペットを始められたのですか?

 

井川

小学校にトランペットだけのクラブがあり入っていました。

 

髙橋

どこに興味をもったんですか?

 

井川

音の華やかさ、明るさ、それからカッコよさ(笑)。小学校の時はとにかくかっこいいのがいちばんで、野球ならピッチャーがやりたいのと同じでしょうか。

 

髙橋

入団なさったときの感想は?

 

井川

たいへんな重圧でした。大学で習った先生やテレビで見た方が並んでいるなかで吹くのがもうこわくてこわくて……

 

髙橋

アナウンサーもそうなのですが、自分の身体を使う仕事の場合、重圧のなかでも自分を開放してベストの状態でいないと、たとえば良い音、伸びのある音が出ないという難しさがありますよね。

 

井川

そうなんです。ところが“知らない”っていうのは幸せなことで(笑)、若い時は勢いで乗り切っていました。月日とともに、徐々に本当のこわさが訪れてきて。1つ1つの音を大切にするあまり、慎重の度が過ぎてしまう。どう音を出そうか、実はいままでまともに吹けていなかったんじゃないかなど、こわさにつながってくるのです。次第に周りも見えてきて、全体のなかでの役割の大きさに改めて気づいたりしました。

 

髙橋

N響に入って印象的だったことは?

 

井川

指揮者によって、オケ全体から立ち上る音が全くちがう場合があることです。

 

髙橋

特に記憶に鮮明な指揮者は?

 

井川

メータは打点が明確でとても分かり易いです。ブーレーズは指揮棒を持たないことでも有名ですが、剃刀のような切れ味も評判通りでした。ゲルギエフは、それほど打点がはっきりしているわけではないのですが、個性的で独創的で、作り上げる音楽は説得力に満ちていました。プレヴィンが作り上げる音楽も実に魅力的でした。

 

髙橋

井川さんはご自身のホームページをお持ちなんですよね。拝見しましたが、内容も充実していて、なかなか「凝り性」とお見受けしました。そのなかで面白かったのが、9か条の「トランペット演奏心得」!「一つ、ラッパ吹きは音を外すことを恐れてはならない。決して守りに入らぬこと」というのは興味深いです。

 

井川

ミスはもちろんいけませんが、安全運転になってしまうと、音楽が面白くなくなってしまいます。トランペットはスケール感が命なので、そういう気概を失ってはいけないと、自分への戒めでもあります。

 

髙橋

感動したのは、そのホームページのなかで、高校生からプロの方まで、質問に、実に丁寧にお答えになっていらっしゃることです。

 

井川

僕も悩んで通ってきた道です。しかし、僕の時代にはネットなどありませんでしたので、このサイトがちょっとした道しるべになればと。

 

髙橋

N響トランペット・セクションは、どのようなチームですか?

 

井川

こういう世界ですから個性の強い人の集まりではありますが、ぶつかりあう個性ではなく、お互いの存在を生かし合うメンバーで、すごくチームワークは良いと思います。

 

髙橋

管楽器は狭き門なのに、年齢的にも5人の方々がバランスよく集まっていらっしゃるようで…

 

井川

そうなのです。津堅直弘さん(1950年生まれ)はちょうどひと回り上の寅年で、その間に関山さん(1955年生まれ)がいます。なにかほぼ6年毎の周期があるみたいで……。僕が大学を卒業した頃はとても厳しい状況で、どこのオケもいっぱいで、5〜6年に1度オーディションがあればいい方でした。それなのにちょうど、東フィル、神奈川フィル、東京佼成ウインドオーケストラのオーディションがいっぺんにあって、東フィルには栃本浩規さんが入り、僕は神奈川フィルに入団でき、楽団生活をスタートさせることができました。
津堅さんの学年、また関山さん、佛坂さんの学年も良いプレイヤーがそろっていますが、僕と同じ歳では栃本氏を始め、都響、東フィルなどで数名活躍しています。

 

髙橋

実力はもちろん、音楽の世界との縁も感じます。ありがとうございました。

 

「フィルハーモニー」2006年11月号掲載 ※ 記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

髙橋美鈴

聞き手

髙橋美鈴

たかはし・みすず

NHKアナウンサー。北海道出身。東京大学卒業。1994年NHK入局。6年間の札幌局勤務後東京アナウンス室。「おはよう日本」で朝の顔として人気を博し、現在「N響アワー」「美の壷」等で活躍中。趣味は美術や演劇鑑賞、茶道。