NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

鈴木弘一

鈴木弘一

ヴァイオリン

すずき・こういち

岩手県出身。4歳からヴァイオリンを始める。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)卒業、桐朋学園大学を経て、アメリカ、インディアナ州立大学卒業。芦野文雄、久保田良作、ジョゼフ・ギンゴールド各氏に師事。イヴァン・ガラミアン・メドウマウント音楽祭、ジョゼフ・シルヴァースタイン・ニューカレッジフェスティバルに参加。岩手で毎年のように演奏会活動を行うかたわら、病院や小学校などでの演奏活動にも積極的に携わっている。1984年4月1日入団。第2ヴァイオリン奏者。

 

人から人へと受け継いでいくことが、クラシック音楽を演奏すること

岩槻

桐朋学園に入学されてからすぐに、7年間もインディアナ州立大学に留学されました。珍しいご経歴ですね?

 

鈴木

留学先にアメリカを選ぶのは当時でも珍しくはありませんでしたよ。大学1年生のとき、ヴァイオリンだけではなく、人生に行き詰まりを感じまして(笑)。ジョゼフ・ギンゴールド先生に師事しました。クラスのパーティーの出席を迷っていたら、すごく怒られたり、カルチャー・ショックをたくさん経験したのはいい思い出です。

 

岩槻

留学のご経験がN 響を目指すきっかけに?

 

鈴木

それは確かにそうですが、N響を一途に目指していたわけではなく、自然に歩んでいるうちに、気がついたらここまで来ていました。しかし、最近になって留学で学んだことの意義などに思い当たるようになってきました。ギンゴールド先生は、奏法のテクニックだけではなく、クライスラーやハイフェッツといった巨匠のヴァイオリン演奏を直に聴いて、名指揮者ジョージ・セルのもとでクリーヴランド管弦楽団にいた人です。トスカニーニも生で知る人。人から人へと繋ぎ、受け継いでいくことがクラシック音楽を演奏することなのだと理解しました。

 

岩槻

9月に来団されたネヴィル・マリナーさんも、伝説の名指揮者ピエール・モントゥーの薫陶を受けた方ですね。

 

鈴木

ヴァーツラフ・ノイマンもそうでしたが、一時代前の古き良き音楽の精神を感じました。リラックスした雰囲気のなかに厳しい一面もあって。またご自身がヴァイオリン奏者でもあるので、器楽奏者ならではの指摘や合図を嬉しく感じました。

 

岩槻

今まで共演された指揮者で印象深い方はいらっしゃいますか?

 

鈴木

やはりノイマンさんは、記憶に残っています。ヴィオラ奏者でしたから、器楽奏者の顔を指揮のなかに垣間見せるところが好きでした。カリスマ性を持った指揮者が近年少なくなった気がしますが、器楽奏者もそうかもしれませんね。留学時代に生で聴いたヴァイオリニスト、ミルシテインの強烈な印象は忘れられないですね。僕らはちょうどそういう指揮者や演奏家を知るぎりぎりの世代なので、この経験を大事にして受け継いで次に繋いでいきたい、と思います。

 

岩槻

世代としての役目も意識されますか?

 

鈴木

音楽の録音再生がレコードからCDに変わったことも、世代間の違いですね。若い演奏家の演奏も時々CDの音質に向かっているように感じることがあります。僕たちは音の感覚の面でも、アナログもデジタルも両方を知る世代なんですね。

 

岩槻

お若く見えますが、50代半ばのベテランです。

 

鈴木

いえいえ。最近、サッカーのチームづくりとオーケストラはよく似ていると気づきました。サッカー・チームのあり方も、オーケストラも、今の時代にあって模索中な感もあります。ヨーロッパのある監督も言っていましたが、チームを良くするには、ひとりひとりのレベルを高めることが必要だと。オーケストラもひとりひとりがより良い、レベルの高い音楽家になることが必要です。それはテクニックのことだけはなく。N響での残りの数年間で少しでもそういう方向を目指していきたいと思います。

 

岩槻

楽器を大切になさるそうですね。運ぶときに身体に当たって揺すってしまわないようにと。

 

鈴木

それを言ったら、娘のヴァイオリンの扱い方などは見ないようにしています。見たら耐えられないから(笑)。

 

文 ― 猪上杉子/ 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2010年11月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。