NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

宮坂拡志

宮坂拡志

チェロ

みやさか・ひろし

東京都出身。桐朋女子高等学校(男女共学)を経て桐朋学園大学音楽学部卒業。カザルスホール主催「プロジェクトQ」、小澤征爾、故ロストロポーヴィチ両氏による「コンサートキャラバン2002、2005」などに出演。2010年、アフィニス文化財団の研修生としてドイツに留学。これまでに木越洋、堤剛、ウェン・シン・ヤンの各氏に師事。2007年2月1日入団。チェロ奏者。現在はN響メンバーを中心とした室内楽でも活躍している。

 

60歳で味わい深く弾いていたい

華恵

5歳でチェロに出会われたんですね。

 

宮坂

長野県松本市に父の転勤で住んでいて、たまたま入園した音楽系の幼稚園で必修の楽器を選ぶときにチェロを選びました。

 

華恵

N響アカデミーの1期生だそうですね。

 

宮坂

そうですね。いい機会に恵まれてきました。何かを教わるというよりも、上手い人と一緒にやれば勝手に上手くなるものなんです。ずっとそうでした。

 

華恵

ご趣味がいろいろあるようですが、何に一番はまっていますか?

 

宮坂

歴史が大好きなんです。

 

華恵

どのあたりの時代が?

 

宮坂

江戸時代は興味がなく、戦国時代と明治ですね。司馬遼太郎さんマニアです。

 

華恵

何がきっかけですか?

 

宮坂

漫画の『龍馬がゆく』を読んだことかな。「信長の野望」というシミュレーション・ゲームにもはまりましたね。このあたりから、司馬さんの著作を繰り返し読むようになりました。

 

華恵

演奏生活の場面では何か役立ちますか?

 

宮坂

地方公演に行った時は、ここは何万石の城下町だなどといろいろ想像しています。
でも高知に演奏に行った時は、高知城や桂浜に行くつもりが、つい鰻(うなぎ)を食べているうちにゲネプロの時間になってしまい、行けずじまいでした。

 

華恵

歴史がお得意だと、その時代の日本と演奏する音楽の時代を照らし合わせたりもしますか?

 

宮坂

こんなアジアの島国の人間が、そもそもどうして西洋楽器をやっているんだろう、なんて疑問に思ったこともあります。

 

華恵

日本人がなぜこんなにクラシック音楽を頑張ってやっちゃうんだろう、とか?

 

宮坂

いや、自分がなぜ西洋楽器をやってるのかをまず考えます。日本人がクラシック好きなのは簡単な話で、盆踊りとオーケストラはみんなで共有できるから。僕自身、オーケストラが好きなのは、みんなと一緒に演奏できるからということに尽きます。

 

 

ツーショット写真

 

華恵

N響に入って今、何年になりましたか?

 

宮坂

7年目ぐらいかな。

 

華恵

変わったことはありますか?

 

宮坂

太りましたね。自分でお金を稼ぐようになって飲み代がかかるようになりました。それぐらいかな、あとは変わらない。

 

華恵

それは音楽には還元されるんですか?

 

宮坂

飲み屋は還元されないですね。筋肉が回復しない。演奏家もこれだけはアスリートと同じらしいんですよ。

 

華恵

お酒の場で話すことが、音楽に向き合う自分に影響するということは?

 

宮坂

僕はそういうの、嫌いなんです。音楽のためになるからと何かをすることには抵抗があります。

 

華恵

意図せずに結果的に音楽のためになったというものはありますか?

 

宮坂

釣りとか川遊びとかは、音楽する人間はしておいた方がいいと思う。川遊びといっても手ですくってカジカを捕ったりするくらいのことなんですが。でも川辺にいると、虫も来るし、風も吹く。都会でただ演奏しているだけでは、自然の中で培われる想像力が育たないから。その程度です。

 

華恵

今後、 音楽観が変わるような気配はありますか?

 

宮坂

常に上手くなりたいとは思っているんですが……(笑)。でも、60歳でブラームスの《ピアノ四重奏曲第3番》の第3楽章や、シューマンの《ピアノ四重奏曲》の第3楽章、こういった曲をたっぷりといい感じに理想的に弾ければなあ、と思っています。

 

華恵

60歳で満足する演奏がしたいと?

 

宮坂

N響のチェロ・セクションの後ろのほうで、定年を間近に控えながら、上手に弾けていたらいいですね。例えばバイエルン放送響のチェロの一番後ろのおじいちゃんなど、とんでもなく上手いんですよ。そういう人になりたいなと思っています。

 

華恵

奥深い楽器ですね。ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 松井伴実

2012年7月取材 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。