NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

飛澤浩人

飛澤浩人

ヴィオラ

とびさわ・ひろと

神奈川県出身。6歳よりヴァイオリンを始める。桐朋学園大学音楽学部卒。卒業後、ヴィオラに転向。1992年第4回モーリス・ヴュー国際ヴィオラ・コンクール第2位。1995年文化庁在外研修員としてパリ留学。エコール・ノルマル音楽院にてコンサート・ディプロムを満場一致で取得。ロワール地方国立管弦楽団で第2ソリストを務める。ヴァイオリンを故久保田良作、景山誠治、故江藤俊哉の各氏に師事。ヴィオラを店村眞積、GeÅLrard CAUSSEの両氏に師事。2006年12月1日入団。ヴィオラ・フォアシュピーラー(次席奏者)。

 

転向したヴィオラはすごく好きです。楽器作りにも挑戦しましたが……

岩槻

入団されて5年目ということですが、入団時の団員紹介の写真と比べると、だいぶイメージが違いますね。

 

飛澤

急に変わったのではなく徐々にですよ(笑)。髪もだんだん短くなって、今は自分で切っています。

 

岩槻

本当ですか?それはすごいですね。ところでヴィオラに転向するきっかけは、店村眞積さんのひと言だったとか。

 

飛澤

僕は以前から替わってもいいと思ってましたが、それまでずっとヴァイオリンを弾いてきて、いきなりヴィオラに転向と言っても踏ん切りがつかないだろうから、コンクールを受けろと言われたんです。1位だったらヴァイオリンを続けてもいいけど、2位以下だったらヴィオラに替われと
言われて、結局ヴィオラになりました(笑)。

 

岩槻

ヴィオラと出会われて結果的にいかがですか。

 

飛澤

ヴィオラはすごく好きです。自分に合っていると思います。

 

岩槻

N響に入団される前は、フランス・ナントのロワール・フィルに7年半在籍されていました。ナントと言えば、日本でも毎年大勢の人々でにぎわっているあのラ・フォル・ジュルネ音楽祭発祥の地ですね。

 

飛澤

ナントは大都市ですが、フランスは文化においても、パリとリヨンが中心になるようにつくられていますので、地方都市であるナントでの演奏会と言えば、僕がいたロワール・フィルだけだったりします。しかしラ・フォル・ジュルネが始まると、海外からたくさん演奏家が来るようになり、地元の人たちもみんな喜んで聴きに行っていました。もちろん僕らのオケも参加しましたよ。

 

岩槻

フランスのオケは、やはり響きが違うものですか。

 

飛澤

違いますね。N響はアンサンブル重視で、セクションがひとつになるような方向性で整えていくので、清潔な一体感が生まれます。一方フランスの場合、そもそも個人主義の国ですから、みんな言いたいことばかり言っています。自分がやりたいことを自分の言葉で言って、それが集まった感じです。ただ、フランス音楽にはそれがとても合っていると思います。例えばドビュッシーの曲をベルリン・フィルが弾いているのを聴くと、確かにものすごく上手い。だけどなんだか違和感があって、それがフランスのオケだと、「ああ、その感じ」というのがあります。向かう方向は一緒なのですが、みんながそれぞれ違うことをやっている──アプローチの仕方や、指遣い、使っている弓や弦の位置が違っているというような。でもそれが色合いになって、独特の色彩感が生まれます。現場で弾いていると弾きづらい面もありますが、ホールでお客さんとして聴くと、それを強く感じますね。

 

岩槻

留学から数えると10年間フランスにいらしたわけですが、そのまま永住されようとはお考えになりませんでしたか?

 

飛澤

フランスは美しい国ですし、ワインもとてもおいしくて(笑)、日本にはない魅力や刺激にあふれていますが、やはり将来は日本に戻って、日本のオケで演奏したいという考えは終始変わらなかったですね。

 

岩槻

ちなみにヴィオラを自分でお作りになるとか? フランスにいらした頃からですか?

 

飛澤

いいえ、帰国してからです。やはり店村さんから「楽器を作ってみたら」と言われて……。店村さんはご自分で弓毛の張り替えをされるので、教えてくださいとお願いしたら、ちゃんと勉強した方がいいから、まずは楽器を作りなさいと。それで作業台や工具は揃えたのですが、演奏活動しながらだとなかなか難しくて。そうしたら店村さんが今度は弓作りにしたらと言うので、弓作りに鞍替えしたんですけど、実はまだ何にもやってないんです(笑)。

 

文 ― 柴辻純子/ 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2011年5月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。