NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

銅銀久弥

銅銀久弥

チェロ

どうぎん・ひさや

広島県出身。10歳よりチェロを始める。桐朋学園大学音楽学部卒。第52回日本音楽コンクール・チェロ部門入選。第68回日本音楽コンクール作曲部門の作品演奏で特別賞受賞。齋藤秀雄、藤原真理、倉田澄子、井上頼豊、ワルター・ノータスの各氏に師事。1984年5月1日入団。チェロ・フォアシュピーラー(次席奏者)。N響チェロ・セクションのメンバー4人で構成される「ラ・クァルティーナ」の一員としての活動をはじめ、ソロ、室内楽の分野でも幅広い演奏活動を行っている。また、桐朋学園大学、洗足学園音楽大学で後進の指導にあたる。

 

楽譜を読むのは、象形文字を解読するような面白さがあります

岩槻

銅銀さんというお名前は珍しいですね。

 

銅銀

そうですね。インターネットで珍しい苗字(みょうじ)を検索すると出てきますが、広島でも少ないです。

 

岩槻

銅銀さんはその広島でチェロの勉強を始められたのですね。

 

銅銀

週に1回、東京から齋藤秀雄先生やそのお弟子さんたちが広島まで来て下さり、教えていただきました。

 

岩槻

桐朋学園大学主宰の「子供のための音楽教室」ですね。齋藤秀雄さんはどのような先生でしたか。

 

銅銀

僕は先生の晩年の生徒で、レッスンを受けたのはわずかな回数ですが、本当に大事なことを重点的に、これは直さなければダメだとか、これは重要なことだというのをぐいぐいっと注意なさる先生で、厳しいというか、指摘されると、どれも納得できることばかりでした。当時は子どもでしたし夢中でしたが、とても貴重な経験をさせてもらったと思います。

 

岩槻

お若く見えますが、N響に入団されてから四半世紀あまり。いろいろなご経験もあるのでは。

 

銅銀

たくさんの指揮者の方々と演奏してきましたが、中でもマタチッチ先生やライトナー先生が強く印象に残っています。団員からの信頼というか団結力を導くようなオーラがありました。

 

岩槻

銅銀さんご自身は、目指している演奏やこだわりはありますか。

 

銅銀

音楽は探究していくとキリがないですよね。楽譜を見ただけや1回練習しただけではわからない、同じメンバーで繰り返し演奏しているうちに浮かび上がってくること、発見できることがあります。作曲家が隠したメッセージと言ったらいいのかな。誰かのイニシャルが隠されているといった次元ではなく、演奏家にしか発見できないものがあると思います。

 

岩槻

具体的に言いますと……?

 

銅銀

例えば、モーツァルトの弦楽四重奏曲をメンバーと一緒に練習していて、しっくりこないところがあると、4分の3拍子なのに全然違う数え方や変則的なことが隠されていたり、思わぬところにフレーズの区切りが隠されていたりして。そういうときはみんなで、こことここは音楽的に別の単語ではないかとか、こうすると説得力のある“ 文章” になるのではと、いろいろ試します。合わせるだけの演奏や仕上げるための練習をしているときには絶対に見つからない発見があって、それを見つけたときの喜びは大きいですね。

 

岩槻

面白いですね。

 

銅銀

モーツァルト自身も王侯貴族と弦楽四重奏を弾いていました。おそらくそのときに自分の才能を示すために、隠していることを種明かしして、一緒に演奏していた人たちを驚かせていたと思います。

 

岩槻

オーケストラの曲でもそういうことはありますか。

 

銅銀

オーケストラの仕事の場合は、楽譜に書かれていないことを指揮者がアドヴァイスしてくれますが、曲によっては楽譜を出版社からレンタルして使う場合がありますよね。世界中を駆け巡った楽譜がN響に届き、作曲者が書いたことだけでなく、これまでの演奏者が楽譜に書き込んだフレーズの記号などを見ると、みんなこうして隠されているものを探しているのかとわかります。まるで象形文字を解読するような、そんな面白さがあるんですよ。

 

岩槻

ロマンがありますね。最後に、銅銀さんのようにチェロが上手くなりたいと思っている方々に何かアドヴァイスをいただけましたら。

 

銅銀

それは僕も教えてもらいたいですね(笑)。上手くなるための近道みたいなものはないと思いますが、今は映像で他のチェリストの演奏を簡単に見ることができ、良い演奏があればそれを真似して勉強できます。その点では今の若い人たちはうらやましいですね。様々なかたちで吸収したり、技術を習得することができますから。

 

岩槻

N響アワーでも、N響の皆さんの熱演の数々や、世界の名ソリストたちの演奏を毎週お届けしていますので、ぜひ番組をご覧いただき、役立てていただきたいですね。

 

銅銀

そうですね(笑)。

 

文 ― 柴辻純子/ 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2011年5月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。