NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

藤村俊介

藤村俊介

チェロ

ふじむら・しゅんすけ

神奈川県出身。桐朋学園大学卒業。日本演奏連盟賞受賞、第58回日本音楽コンクール・チェロ部門第2位入賞。1993年、アフィニス文化財団の奨学生としてドイツに留学。チェロを安田謙一郎、ペーター・ブックの各氏に師事。1989年8月1日入団。チェロ・フォアシュピーラー(次席奏者)。N響メンバーで結成され、今年でデビュー10周年を迎えたチェロ四重奏団「ラ・クァルティーナ」でも活躍。また、フェリス女学院大学では後進の指導にあたっている。

 

宝石のような仕事を一つずつ残していきたい

黒崎

チェロのパートを見ていると、藤村さんの弾きぶりは隣に座る首席奏者の藤森さんとは対照的ですね。

 

藤村

そうなんですよ、彼とは同じ歳ですけれど、すべてが対照的なんです。弾き方も違うし、音楽性も違う。でも同じジェネレーションの親近感もあるんです。付き合いが長いですから、今なにを気にしていて、どうしたいのかまでわかります。

 

黒崎

隣に木越さんが座る場合にはまた違いますか。

 

藤村

木越さんはジェネレーションが一回り上ですが、音楽的に僕と近い。それぞれの長所に僕は合わせてるんです(笑)。

 

黒崎

次席奏者として首席の方から伝わるメッセージを後ろのメンバーに伝えるんですよね。

 

藤村

後ろに座るのが誰かによってもずいぶん違うんですよ。「ああ、わかってくれた」とか「伝わってるな」とか、後ろの反応は背中でビンビンに感じます。

 

黒崎

チェロ・パートのみなさんはどんな雰囲気なんですか。

 

藤村

僕が入った20年くらい前は怖い雰囲気だったんですが、今は仲がいいですね。いっしょにお昼ご飯を食べたりとか。

 

黒崎

じゃあお互いのことはよくわかるんでしょうね。

 

藤村

そうですね。といってもプライベートなことはあまり知りません。それよりも、音楽面でどう考えるかには精通し合っています。
みんなが遠慮してるような雰囲気がある時は、僕から「こうしたいんじゃない?」って水を向けますね。

 

黒崎

チェロの魅力はどんなところにあると思いますか。

 

藤村

いい音が出るところでしょう(笑)。チェロの弾き手はこれ以上いい音がでる楽器はないと誰もが感じているはずです。

 

黒崎

その音色に引かれてチェロを選ばれたんですか。

 

藤村

小さい頃から弾いていましたが、男子校の中学に通っていた頃に、軽井沢のホテルに女の子がいっぱいいる合奏団を聴きにいく機会がありました。チェロを大学生のお兄さんが弾いていて、ああ、すごく素敵な世界だなあと思って、合奏をやりたくなったんです。不純な動機です(笑)。音楽が素敵だったのか、女の子が素敵だったのかわからないけど、すべてがまぶしく見えたんです。

 

黒崎

憧れがあったんですね。チェロの練習は大変でしたか。

 

藤村

そこからはチェロ漬けでした。なるべく長い時間練習をしようと思ってましたね。早く能率よく終わらせようとは考えずに、時計を見て今から8時間練習だ、と、まるでスポーツの特訓のように、内容より時間重視でしたね。

 

黒崎

それが今の財産になっているのでしょうね。

 

藤村

効いているように思います。

 

黒崎

日曜大工がお好きだとか。

 

藤村

大好きですね。朝から晩までやっていいといわれたら、こんなに楽しいことはないというくらいです。最近は、玄関に網戸があったらいいなと思って力作を作りました。

 

黒崎

ご自身のホームページにあった写真を拝見しましたが、木枠のおしゃれな網戸ですよね。

 

藤村

いくつか作りましたが、今回の網戸がいちばんの成功作です。実際、役立っていますし。

 

黒崎

釣りもご趣味と聞きましたが、いつ頃から?

 

藤村

釣りはN響に入ってからです。1年に1回、対馬や五島列島の秘境に行って、1週間合宿してクロダイを釣るんです。本州じゃなかなか釣れないような、50センチオーバーのクロダイがいます。

 

黒崎

気分転換になりそうですね。

 

藤村

周りがとても静かで自分が音をたてなかったら、なにも聞こえない。そんなところで夕方迎えの船が来るまで、ずっと釣りに集中する。普段とはかけ離れた得がたい体験なんです。

 

黒崎

これからの目標は。

 

藤村

仕事の質をもっと上げたいですね。もう弾けるからといって、7割の準備で仕事をすることはしたくない。かけがえのない宝石のような仕事を一つずつ残していくのが理想です。

 

文 ― 飯尾洋一/ 写真撮影 ― 笠井佳江
「フィルハーモニー」2011年12月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。