NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

藤森亮一

藤森亮一

チェロ首席

ふじもり・りょういち

京都府出身。11歳よりチェロを始める。京都市立堀川高等学校音楽科(現、京都市立京都堀川音楽高等学校)を経て東京音楽大学に特待生で入学。1982年、第29回文化放送音楽賞を受賞し、1983年第52回日本音楽コンクール・チェロ部門で第1位を獲得する。1987年10月1日入団。これまでに徳永兼一郎、上村昇、河野文昭の各氏に師事。現在、モルゴーア・クァルテット、チェロ四重奏団「ラ・クァルティーナ」のメンバーとしても活躍している。

 

神様が降りてきたような体験はオーケストラならではです

黒崎

いつも楽器と一体になっての熱演。気持ちを込めて演奏されているせいなのでしょうか、よく足が上がったり動いたりされていますよね。

 

藤森

中学生か高校生の頃に、ある巨匠チェリストの来日公演を聴きにいったら、足の行儀が悪かったんですよ。その足の行儀の悪さがカッコいいなあと思ってマネをしたのが始まりです。

 

黒崎

じゃあ、最初は意識して。

 

藤森

最初は意識してたんですが、いつの間にか無意識に動かすようになってしまったんです。

 

黒崎

N響のチェロは皆さん仲がいいとか。

 

藤森

そうですね。これはN響だけじゃないんです。チェロは世界中どこのオケでも仲がいい。オケだけじゃなく、留学中でも先生が生徒たちを引きつれて食事に行ったりとか。

 

黒崎

コミュニケーションを大事にする楽器なのでしょうか?

 

藤森

人数的にもちょうどいいんですよ。ヴァイオリンだと数が多すぎますし。それと、チェロは皆おっとりしています。穏やかな人がチェロを選ぶのか、チェロを弾くとそうなるのかはわかりませんが。

 

黒崎

楽器の性格なのですか?

 

藤森

のんびりしてるんです。ヴァイオリンと同じようなことをやらされてもヴァイオリンほど繊細に器用なことはできませんし、一方で低音で支えたりもします。すべてのパートを視野に入れなければいけないんです。

 

黒崎

N響メンバーによるチェロ・カルテット、藤森さんが声をかけられて実現したのですか?

 

藤森

そうです。どうせやるんだったらいつも一緒に弾いているメンバーでできたらいいなと。年代も近いですし。軌道に乗ってきたのは嬉しいのですが、忙しくてぜんぜんオファーに応えられないのが残念です。

 

黒崎

オーケストラに室内楽にと、本当にお忙しそうですね。

 

藤森

僕は自分から動くほうじゃなくて、人から誘われるとホイホイ付いていくほうなんです。そういうことをやってるうちにどんどん忙しくなってしまった。でも本来は練習嫌いの怠け者で、ボーッとしているのが好きなんです。

 

黒崎

とてもそうは思えません。

 

藤森

だから忙しいのはありがたいくらいなんです。

 

黒崎

室内楽はオーケストラとはまた違った楽しみがあるのでしょうか?

 

藤森

どちらもそれぞれの良さがあります。室内楽、オーケストラ、ソロ、どれが欠けてもダメなんです。ソロは自分がすべてですし、室内楽は相手と対話しながら学ぶことも多い。オーケストラでは何物にも代えがたい素晴らしい経験が得られることがある。ごくごく稀にですが、神様が降りてきたような体験ができる。これはオーケストラならではです。

 

黒崎

たとえばどんなときに?

 

藤森

少し古い話になりますが、サヴァリッシュさんがドイツものを振ったときとか、スヴェトラーノフさんがロシアものを振ったときがそうですね。自分の力じゃない何かが後押ししてくれるんです。それがオーケストラ全体に加わって、弾いている自分の感動とお客さまの感動が一致することがある。何年かに一回ですが、そういう演奏になったときは、背筋がゾクゾクして涙が出てきます。

 

黒崎

本当に夢のような時間ですね。そういう演奏を追い求められておられるのですね。

 

藤森

うーん、追い求めても出会えないんですよ(笑)。

 

黒崎

これからぜひやってみたいということはありますか。

 

藤森

以前はやったことのないものをやりたいという願望が非常に強かったんですが、最近はそうでもないですね。初めての曲はカルテットのほうでできるので、むしろバッハの《無伴奏チェロ組曲》やベートーヴェンのソナタを絶やさずに毎年弾き続けるように心がけています。

 

 

文 ― 飯尾洋一/ 写真撮影 ― 笠井佳江
「フィルハーモニー」2012年1月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。