NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

俣野賢仁

俣野賢仁

ヴァイオリン

またの・けんじ

熊本県出身。桐朋学園大学音楽学部卒業。これまでにヴァイオリンを猪本乙矢、猪本耀子、徳永二男、山口裕之の各氏に師事。1989年7月1日入団。 第2ヴァイオリン次席奏者。

 

もっと上手になりたいと思うようになりました

華恵

お独りで過ごされるのが好きとうかがいました。

 

俣野

はい、子どもの頃から独りが好きです。一人っ子で両親が共働きだったので。

 

華恵

クラシックを家で聴くことが多かったそうですね?

 

俣野

小学校からそうでしたね。でも、高校ではちょっとだけブラスバンド部にいて団体活動の体験もありますよ。

 

華恵

何の楽器を?

 

俣野

打楽器です。高校に入った時点でヴァイオリンで音大を受験すると決めていたので、ヴァイオリンや受験勉強と両立できるならかまわないと言われたんですが、両立は困難でしたね。6時ぐらいまで部活をやって家に帰って、それから勉強とヴァイオリンの練習というのはやはり無理でした。ただ唯一の部活体験なので、先輩や仲間との思い出ができました。体育祭のマーチングや、高校野球の応援でスタジアムに出かけて演奏したりもしました。

 

華恵

どうして部活ではパーカッションを選ばれたんですか?

 

俣野

地元の熊本で、子どもの頃に母と聴きに行ったオーケストラの打楽器奏者がすごく上手だったので、憧れていましたから。

 

華恵

ヴァイオリンはどういう存在だったんですか?

 

俣野

小さい頃からずっとやっていて、この楽器で大学に入れるなら、家を出て一人暮らしができると思っていました。

 

華恵

自分を旅立たせてくれるものだったんでしょうか?

 

俣野

そこまでは考えていなかったと思います。むしろ生活の一部みたいな感じかな。当たり前の手段でしたね。

 

華恵

休みの日に遊びで弾いたりはされますか?

 

俣野

それはまずありません。練習しなきゃいけない時しか弾きませんね。今、ちゃんと練習しなきゃいけないなとあらためて思い始めています。

 

 

ツーショット写真

 

華恵

ヴァイオリンへの取り組み方は、若いころからは変わりました?

 

俣野

変わってきていますね。子どもの頃はジュニア・オーケストラにも入っていたので、楽器は音楽の友達と交流するためのものでした。学生の頃は当たり前に身近にあって無意識でしたね。どんなに人から注意されても、演奏法を変えようなどと気にしたりしませんでした。N響に入ってはじめて、プロとしての責任感から、人のアドバイスをよく聞いたり、いろいろな方の演奏から学ぼうとするようになりました。

 

華恵

もう入団されて20年以上ですが、今、練習をしなきゃというのはどういうことなんですか?

 

俣野

入団したての頃はまったく余裕がなく、どんな曲もすべてが初めてでしたから必死に練習してぎりぎりについて行く状況でした。20年いると、さすがに弾いたことのある曲はコツが分かるようになります。指揮者が変わるのでまったく同じということはないですけれど、体が覚えていたりとか、頭で前回のことを思い出したりすると、少しはゆとりを持って取り組めるように最近ようやくなってきました。でも一方で、今こそ練習をして行かなくては、と焦る気持ちも出てきました。若い時はそんなに上手になりたいと思っていなかったんですけど、今はもっと上手になりたいなと思います。今までそういう努力をあまりしてこなかったので少し反省しているんです。

 

華恵

若い頃よりも練習が必要なんですか?

 

俣野

若い頃のほうが上手い具合にこなせているような気になっていたんですが、今の方がもっと上手に弾きたいという気持ちもあるし、練習しないことに対する怖さを感じるようになってきました。こう見えて年齢もいっているので、体も鈍ってきますから、無茶が利かなくなってきました。

 

華恵

無茶というのは?

 

俣野

たいていの場合は、ライブラリーで楽譜を借りて予習をしてから練習に行くんですけど、予習しないで行くこともたまにあって、若い時にはあまり何とも思わなかったんですけど、今は心配でドキドキして前日など寝られなくなってしまいます。

 

華恵

意外です。そもそもヴァイオリンの方は人前で弾く度胸がおありなのだと思っていました。

 

俣野

アンコールを自ら弾いたりとかいうような目立つことは、僕はちょっと苦手です。

 

華恵

人前で弾くのは演奏家の宿命ですよね?

 

俣野

たしかにそうですが、僕の場合、外に出ないで、独りで本を読んで音楽聴いて一日家に籠っていても全然退屈しない性格なので。

 

華恵

私のイメージでは、弦楽器の中でもヴァイオリンの方が意見を主張して、みんなを引っ張っていくのだろうと。

 

俣野

僕は苦手ですね。カルテットで演奏する際なども、第1ヴァイオリンの人の意見に、チェロの人やヴィオラの人が同調したり反論したりして演奏をつくっていく一方で、僕はなんとなく無言になってしまいます。

 

華恵

ヴァイオリン奏者にもさまざまな役割があるんですね。ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 松井伴実

2012年7月取材 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。