NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

谷口真弓

谷口真弓

ヴィオラ

たにぐち・まゆみ

埼玉県出身。東京藝術大学音楽学部卒業。1991年、東京音楽大学附属高等学校在学中に東京文化会館主催新進音楽家デビュー・コンサートに出演。1994年、イタリア・キジアーナ音楽院夏期セミナー室内楽コースでスカラシップおよび最優秀ディプロマ名誉賞を受ける。2000年5月1日入団。2007年1月から1年間、ベルリンに留学。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にて、定期公演およびツアーやレコーディングに参加。ベルリン・フィルのヴィオラ奏者であるW.シュトレーレ、W.キュスナー両氏のもとで研鑽を積む。これまでにヴァイオリンを小林武史、ヴィオラを故浅妻文樹、店村眞積の各氏に師事。

 

ベルリン・フィルでの経験を思い出しながら演奏に取り組んでいます

岩槻

N響に入団して8年目の2007年、ドイツに留学されたんですよね。

 

谷口

やっとやっとの思いで留学がかなったので、飛行機に乗った瞬間に、うれしくて涙が止まりませんでした。そして、幸運なことに滞在中に、ベルリン・フィルに加えていただいて、演奏することができたんです。

 

岩槻

あの、名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ですか? それは、すごい。

 

谷口

はい。憧れのオケで演奏させていただいて、コンサートが終わるたびに、なんていいコンサートだったのだろうと興奮しながら帰宅しました。

 

岩槻

とくに思い出に残る演奏はありましたか?

 

谷口

どちらかというとブルックナーは苦手だったのですが、ベルリン・フィルで演奏したときに、まるで1本の映画を見ているかのように音楽が流れて、最後のページをめくって音楽が終わってしまうことが淋しくて、悲しい気持ちになったんです。それ以来、ブルックナーの魅力に取り憑(つ)かれてしまいました。

 

岩槻

ごめんなさい。話をお聞きしていたら、私まで涙が出てきてしまいました。

 

谷口

ベルリン・フィルではそういう経験がたびたびあって、自分の中に、演奏したいという思い、音楽を愛する気持ちがこんなにもあったのか、と我ながら驚くほどでした。

 

岩槻

リハーサルは大変だったのではありませんか?

 

谷口

もちろん、常に最上級のものを要求される毎日でしたから、しがみついて離されないようにするのは本当に大変なことでしたが、なにか見えない力で随分引っ張り上げてもらっていることを、いつも実感していました。しんどいこともたくさんありましたが、夜になってコンサート会場に行けば、自分が演奏する側であれ、聴衆としてであれ、どんな嫌なこともチャラになるくらい、幸せになれました。この1年のためにこれまでの人生があったんだと思えるくらいの、宝物のような時間ですね。

 

岩槻

本当に素晴らしいご経験でしたね。帰国されて、N響で演奏されるときにも、演奏に対する心構えなどは変わりましたか?

 

谷口

そうですね。1年の留学を経験させていただけたことが、単なる過去の経験にならないよう、常にあの気持ちを思い出しながら、演奏に取り組んでいます。

 

岩槻

オフタイムはどのように過ごされているのですか?

 

谷口

お芝居が好きで、年間30本くらいは観に出かけています。いちばん多いときで月に8本なんていうときもありました。

 

岩槻

それはすごい! どんなお芝居をご覧になるのですか?

 

谷口

歌舞伎や現代劇が主です。ステージの上でパフォーマンスをするというのは、オーケストラもお芝居も一緒です。役者さんたちの芝居に対する姿勢や情熱にはいつも刺激を受けますし、生きるエネルギーになっています。

 

文 ― 猪上杉子/ 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2011年6月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。