NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

御法川雄矢

御法川雄矢

ヴィオラ

みのりかわ・ゆうや

北海道出身。10歳よりヴァイオリンを始め、14歳でヴィオラに転向。桐朋女子高等学校(男女共学)を経て桐朋学園大学音楽学部卒業。これまでにヴァイオリンを市川映子、ヴィオラを江戸純子、室内楽を青木十良、岩崎淑の各氏に師事。2009年2月1日入団。

 

グルーヴ感はクラシックでも大切です

華恵

最初に習ったのはピアノですか?

 

御法川

家にあったピアノはほとんど触ってないです。音楽を聴くのが好きだったので、「N響アワー」などで、オーケストラや演奏家の音楽が流れていて、「こういう仕事をする人たちがいるんだな」と興味を持ちました。こうなれたらいいなと思って自分で調べて、それでヴァイオリンを始めたんです。

 

華恵

おいくつの時ですか?

 

御法川

小学校4年の時ですね。

 

華恵

どうやって調べたんですか?

 

御法川

大人に聞いてみたり、レコードの後ろを見てみたり。

 

華恵

なぜヴァイオリンを選んだんですか?

 

御法川

テレビに映るのはヴァイオリンが多かったですし、格好いいな、すごいなと思ってのことですね。

 

華恵

ヴィオラにはいつ出会ったんですか?

 

御法川

ヴァイオリンは3、4歳から始めるのが普通なのに、僕の場合はとても遅かったので、これは追いつけないと感じ始めました。いろいろな先生に相談したら、プロの演奏家になるためには音楽高校に入るべきだと言われましたが、ヴァイオリンは課題曲が難しいので、ヴィオラで受けました。将来性を買ってもらおうという目論見で。

 

華恵

ヴァイオリンからの転向は意外に早かったんですね。アルト譜表に面食らったりしなかったんですか?

 

御法川

ヴィオラがアルト譜表で書かれていることすら知らなかったですね。先生からは、絵として慣れなさい、そうすれば何とかなるよと言われて。

 

華恵

楽譜に慣れるよりも難しかったことは何ですか?

 

御法川

ヴィオラの音を鳴らすのが難しかったんです。

 

華恵

ヴァイオリンを弾いていたのに?

 

御法川

同じように見えるんですけど、ヴィオラらしい音を出すのが難しくて。低い弦があるので、より脱力して重さを乗せて、ゆっくり引っ張るような弾き方をするんです。ヴァイオリンだったらすっと音が出てくれるところが、同じ弾き方では重さが足りなかったり音の深さが出なかったり。音を出すテクニックの方が難しかったですね。

 

華恵

ヴァイオリンは繊細な動きや細いラインを弾く難しさがあって、ヴィオラの方がもっと伸びやかに演奏できるのかと思っていましたが、その伸びやかさに行き着くまでが難しいんですね?

 

御法川

そうなんです。よく「ヴィオラの音」じゃないって言われてしまうんです。でも当時は「ヴィオラの音」のイメージも漠然としていましたから、その音を求めていく時間がすごくかかりましたね。

 

 

 

華恵

ヴィオラとヴァイオリンでは奏者の性格も違うイメージがあります。ヴィオラは性に合っていましたか?

 

御法川

そうですね。結果的には自分にとても合っていましたね。結局は音の魅力に惹かれてしまいました。楽器特有の人柄というのは、その人の声と一緒で、続けているうちに徐々に作られてくるんじゃないかなと思うので。ああ、自分はヴァイオリンじゃなかったなと今は思いますね。

 

華恵

ヴィオラに替わってよかったですか?

 

御法川

実際にヴァイオリンよりも人数的に少ないですし、奏者の仕事の枠としても幅広いことを実感しました。

 

華恵

ヴィオラの方が幅が広いというのは意外に感じます。タンゴのグループでも活躍されていますが、タンゴでヴィオラが使われることも知りませんでした。

 

御法川

オルケスタ・ティピカ、つまりオーケストラと言われるグループにはヴィオラ、チェロが1本ずつで、ヴァイオリンが4人ぐらい、バンドネオンが大勢いるという編成です。

 

華恵

タンゴには特殊な奏法があるんですか?

 

御法川

駒より手前の巻きの部分を擦(こす)ってラテン音楽の打楽器のギロみたいな擬音を出すチチャーラという奏法や、タンブーロと言ってタンバリンみたいな音を出したり。リズムを打つ時の弓の使い方が違ったり。

 

華恵

現代音楽で応用できそうですね。

 

御法川

そういうこともありそうです。

 

華恵

ジャンルの垣根は感じませんか?

 

御法川

どんなジャンルでも楽器を弾くというベースは同じですからね。違うのは楽譜が違うことと、グルーヴ感、つまり「ノリ」のようなものが違うだけ。

 

華恵

クラシックではグルーヴ感という言葉はあまり聞かないのですが…。

 

御法川

クラシックにだってあります。グルーヴ感がない音楽はつまらなくなってしまうから。グルーヴ感の種類がジャンルによって違うだけなんです。

 

華恵

新鮮な視点ですね。ありがとうございました。

 

写真撮影 ― 松井伴実

2012年6月取材 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。現在、東京藝術大学音楽学部楽理科に在学中。