NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

早川りさこ

早川りさこ

ハープ

はやかわ・りさこ

千葉県出身。東京藝術大学卒業。第3回日本ハープコンクールおよび第2回アルピスタ・ルドヴィコ・スペイン国際ハープコンクールで優勝。2001年7月1日入団。ヒンデミット《木管とハープのための協奏曲》、アルウィン《ハープ協奏曲》、リーバーマン《フルートとハープのための協奏曲》等を日本初演している。東京藝術大学附属高等学校および同大学にて後進の指導にある。J. モルナール、桑島すみれ、井上久美子、S. マクドナルドの各氏に師事。

 

ハープは繊細な楽器。開演直前まで舞台で調整しています

黒崎

開演直前まで舞台上で楽器を触っていらっしゃいますね。

 

早川

ハープは弦が47 本あるのでチューニングが大変なんです。空気の流れとか温度や湿度の変化でどんどん変わってしまいます。開場すると湿度が微妙に変わるので、可能な範囲でベストなチューニングをしようと思うと、結局ぎりぎりまで舞台にいることになってしまって。切れそうな弦がないかも慎重にチェックしています。

 

黒崎

繊細な楽器なんですね。けっこう重たいのですか?

 

早川

40 キロ程あります。

 

黒崎

弾くにも力が必要ですね。

 

早川

張りの強い弦を弾くので握力は使っていると思います。ペダルの上下操作で足も使うので、見た目よりもハードです。

 

黒崎

お母様がハープ奏者でいらして、身近に楽器があって始められたそうですが、学生時代はバンド活動もされていたとか。

 

早川

キーボードを弾いていました。学校ではハープをやり、それ以外はバンド活動をしていました。幼少からやっていたピアノは習わされている感が強く、クラシックのピアノとしては長続きしませんでした。途中で転向したハープは相性が良かったみたいです。

 

黒崎

N響でやっていて良かったなと思うことはありますか。

 

早川

素晴らしい指揮者やソリストの方々と同じ舞台の上で同じ空気を吸えることも幸せです。リハーサルも、とても勉強になっています。指揮者のこだわりや解釈によって音や世界が変わっていく様が目の前で繰り広げられている。新しい発見や感動に刺激を受ける毎日です。また団員の一人ひとりがものすごくプロフェッショナル意識を持っていて、ベストを尽くそうと陰で努力しているのがわかります。そんな尊敬できる仲間と一緒に仕事ができるのは嬉しいですね。恵まれていますよね。

 

黒崎

印象に残っているマエストロを一人挙げるとしたら?

 

早川

ハープ奏者としての視点から言えばデュトワさんですね。職人としての耳を持っていると思います。例えば「この和音のバランスはどうだろう。音量は大丈夫か。アルペッジョのスピードはこの位かな?」など、非常に細かいことにこだわって弾いていると、それに対して目で指示が来ます。そこまでこちらの悩みをくみ取ってそれに応えてくれる指揮者はあまりいません。それと、演奏をある程度奏者に任せてくれる所もあって、良いときは「いいね」というリアクションが来ます。一緒に作り上げている面白さがあります。

 

黒崎

ハープはオケの中で自分の音を聴くのが難しそうですね。

 

早川

自分の音がどの位置にいるのか、というタイミングが難しいです。舞台の反対側にいるコントラバスと一緒に弾く所や、コンサートマスターのしっとりとしたソロの伴奏の時など、距離感をわかった上で空気を読まなくてはならない。思っているのと違うタイミングで出なければならなかったりする事も。音量やバランスも、客席で聴いてどうなのかは経験を積まないとわかりづらいですね。いつもリハーサルをホールの真ん中の位置で録音して自分の音を確認しています。音量とタイミング、それと皆の歌い方と合っているか。オーケストラのハープはコツがいると思います。

 

黒崎

学生には、ハープ奏者には何が大事だと教えるのですか。

 

早川

音の隅々まで聴くように言っています。顕微鏡の倍率を上げるように耳を澄ましたら、もっと色々なものが聴こえてくるからと。

 

黒崎

学生に、先生ではなく、りさこさんと呼ぶように言っているというのは本当ですか。

 

早川

教え始めた6 年前は、先生と呼ばれるのに慣れていなくて、そう頼んでみたのですが、難しかったようです。「毎日寝る前に3 回くらい言っていれば慣れるから」と言ってみたのですが、「やっぱりダメです先生」って(笑)。それで無理強いしないことにしました。

 

文 ― 柴辻純子/ 写真撮影 ― 笠井佳江
「フィルハーモニー」2012年1月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。