NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

菅原 潤

菅原 潤

フルート

すがわら・じゅん

秋田県出身。国立音楽大学卒業。1982年、新星日本交響楽団に入団。1990年7月1日、当団に入団し現在に至る。ソリストとしても活躍しつつ、ゲスト・プレーヤーとして、数多くのオーケストラ、室内楽演奏会等に招かれ、活発な演奏活動を行っている。また、ソロ楽器としてのピッコロの魅力を広める演奏活動は各地で絶賛されている。フルートを畠山久雄、小野安宏、斉藤匠、故中谷望、故木下芳丸の各氏に師事。現在、国立音楽大学、洗足学園音楽大学講師。

 

草笛のような楽器ピッコロを操るのは、経験と柔軟性のある技

岩槻

菅原さんはフルート奏者ですけれど、ピッコロも演奏されるんですね。

 

菅原

そうです。オーケストラではフルート奏者が兼任します。

 

岩槻

はじめてピッコロを目の前で拝見しましたが、小さいですね。

 

菅原

フルートはもともと100年位前は全部木でできていたんですが、時代が進むにつれて金属になりました。ピッコロも両方あって、これは木の楽器ですが、両方使っています。

 

岩槻

材質の違いによって音色も違うのでしょうか?

 

菅原

違いますね。最近また木製のフルートが新品で作られるようになって、N響では神田寛明さんが黒い木製のフルートを使います。彼が木の楽器を使うときは僕も木の楽器を使いますね。

 

岩槻

フルートどうし音色をそろえてらっしゃるんですね。

 

菅原

はい、奏法が近ければ合わせやすいんです。木のフルートは独特の音色がありますから、そういう楽しさもありますね。昔ヴァーツラフ・ノイマンさんが《わが祖国》全曲を指揮したとき、元N響の首席奏者でいらした小出信也さんが当時エキストラで出演していた僕に、金のフルートで全部リハーサルが終わった後で「明日は木でやろう」と言い出したことがありました。驚きながらも、思わず「はい」と答えてしまった(笑)。

 

岩槻

それまで金のフルートで練習していて、いきなり木のフルートに替えても大丈夫なんですか?

 

菅原

柔軟性のある吹き方をしている方は対応できるんですね。小出さんはすごく柔軟な吹き方をされていたので、勉強になりました。

 

岩槻

そうやって対応できるのも、プロならではですね。

 

菅原

そういう意味では、もっと大胆なこともしていますよ。僕は新調した楽器を即本番で使うのがポリシーなんです。先日、新素材の白いフルートをリハーサルと本番の間に買ってきたんです。前から注文していたんですが、たまたま入荷したのがそのタイミングだったので、いきなり本番に使いました。いつもそうしているんです。

 

岩槻

ぶっつけ本番で、こわいですねぇ。

 

菅原

この、ピッコロでもいろいろやっています。ピッコロはもともと音程があってないようなもので、草笛みたいなものなんです。楽器がとても小さいので楽譜通りの指遣いをしてもその音が出るとは限らない。

 

岩槻

う~ん、難しいですね。

 

菅原

いえ、難しいんじゃなくて、小さすぎて無理のある楽器なんです(笑)。骨董品の楽器を使ったりすることもあるのですが、昔の楽器はうんと高いドの音は出ても、半音下のシの音が出ない。でも《第9》なんかだとシが出てきますから、さぁそこでどうするか。

 

岩槻

どうされるんですか?

 

菅原

企業秘密です ! なんて(笑)。シとドは近いですから。

 

岩槻

どんな秘技なんでしょう? 興味あります。そういった裏技も先生から教わるのですか?

 

菅原

N響で吹いていた故木下芳丸さんが師匠でしたが、ピッコロの技術的なことはあまり教わりませんでしたね。オーケストラの昔話はたくさん聞きましたが(笑)。

 

岩槻

では、相当ご自分で工夫をしてピッコロを吹くように?

 

菅原

そうですね。本当は楽器の設計がまったく違うのに指遣いをフルートと同じにしてるので、不都合が出てくるんです。それを埋めるのは、やはり柔軟性のある技なんですね。

 

岩槻

ピッコロのソロでCDを録音されているとうかがいました。

 

菅原

はい、2枚ほど。モーツァルトの《オーボエ四重奏曲》のような、オーボエのレパートリーもピッコロで吹いたアルバムを作りました。世界的にも珍しい試みだと思います。

 

岩槻

ピッコロはとても小さな楽器ですけれど、オーケストラの中では存在感がありますよね。

 

菅原

特にNHKホールで吹くときは、大きな音を出していますからね。3階席のてっぺんのお客様まで届くように、思い切り吹いています(笑)。

 

文 ― 飯尾洋一/ 写真撮影 ― 松井伴実
「フィルハーモニー」2010年12月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

岩槻里子

聞き手

岩槻里子

いわつき・さとこ

NHKアナウンサー。愛知県出身。津田塾大学卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。1998年NHK入局。2007年6月~2008年3月までメインキャスターを務めた「お元気ですか日本列島」では気さくな人柄が人気を呼んだ。2008年7月から「COOL JAPAN―発掘!かっこいいニッポン」のナレーションを担当。2008年4月から2011年3月まで「N響アワー」に出演。趣味はヴァイオリン。