NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

新田幹男

新田幹男

トロンボーン首席

にった・みきお

奈良県出身。17歳よりトロンボーンを始める。大阪音楽大学卒業。2000年仙台フィルハーモニー管弦楽団第1奏者として入団し、2002 年読売日本交響楽団に移籍。これまでにトロンボーンを呉信一、ニッツアン・ハロズの各氏に師事。2007年1月1日入団。トロンボーン首席。現在、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、水戸室内管弦楽団のオーケストラメンバーとして活躍し、ハイブリッド・トロンボーン四重奏団のメンバーでもある。洗足学園音楽大学、東京音楽大学、東京藝術大学、愛知県立芸術大学で後進の指導にあたっている。

 

後ろの列の楽器はタイムラグを考えて演奏します

黒崎

トロンボーンは一番高い席から俯瞰する位置ですね。

 

新田

オーケストラ全体から出て来る響きの全部を体感することができる、とても幸せなポジションです。ティンパニの隣で、最後列のN響の並び方が気に入っているので、ぜひとも変えないでほしいですね。

 

黒崎

最後列ですと演奏上なにか特有のくふうもあるのですか?

 

新田

先日、一列前に移動して演奏する機会があったのですが、一列変わるだけで響きのとらえ方に違和感があって混乱してしまいます。北米ツアーでいろいろなホールに行ったときも位置をなるべく変えないようにとお願いしました。

 

黒崎

首席としての役目ですね?

 

新田

管楽器奏者は孤独なんです。一人一人の演奏が多いので孤立してしまうんですね。隣でいつも聞こえる音が聞こえなくなると、不安になり音が座らなくなるんです。

 

黒崎

タイムラグを考えて演奏すると聞きましたが?

 

新田

後ろの列の楽器はちょっと早めに演奏します。例えばR.シュトラウス《英雄の生涯》の冒頭の旋律で、チェロなどの低弦楽器と同時にホルンが吹くと、ホルンが遅れて聞こえてしまいます。ですから、実際にはホルンは早めに吹いているのですが、客席で聴くと揃って聞こえるんです。

 

黒崎

どういうふうに耳と頭で計算するのでしょう。

 

新田

それはもう、センスですよ。早すぎてもいけないし、ゆっくりすぎてもいけない。どういう感覚なのかは経験していかないとできないことですね。弦の音が届く速度と管のスピード感は一緒ではないので、大きいホールに行けば行くほど客席との距離が出て来て難しい。息(ブレス)を多めにしてみたり、撥音を強めにしてみたり、音をシャープに短くしてみたりなどのくふうをします。

 

黒崎

他のオーケストラのご経験もおありですが、N響はどんなオーケストラですか?

 

新田

どんなときでもきちんと音が集まるという強みがありますね。そのうえ指揮者のパッションが僕たちを引っぱってくれたら、もっと素晴らしい瞬間が生まれますね。

 

黒崎

印象に残っているマエストロは?

 

新田

ブロムシュテットさんとはじっくりお話をする機会がありました。ピアノを弾いてみせてくれながら40分くらい、ブラームスやトロンボーンセクションについてお話しされました。「一人じゃ何もできない楽器だから首席の君が合図を出したときにみんながきっちり付いてくるように、一人一人が主張し合う中でちゃんと音をブレンドさせて、トロンボーンのハーモニーの中にオーケストラを包み込むように」と。神と話しているようでした。

 

黒崎

マエストロのお人柄を感じる素敵なお話ですね。

 

新田

デュトワさんとも話す機会がありました。首席就任のとき、「ようこそ、おめでとう」とサントリーホールの楽屋で声をかけてくださり、嬉しかったです。

 

黒崎

意識して心がけていらっしゃることは?

 

新田

一番大事に思っているのは、必要以上にべたべたしたくないということ。全員がスーパー奏者ですから、それぞれがこうしたいという思いを持っているはずです。それをお互いに主張し合って音を重ね合いながらやっていきたい、と思っています。

 

黒崎

他のトロンボーンセクションの方との交流はどのように?

 

新田

お昼もいつも一緒に食べに行きますし、終わった後、飲みに行ったりもします。世界中どこへ行ってもトロンボーン吹きとはすぐに交流できてしまいます。この間、ニューヨーク・フィルのトロンボーン奏者に会う機会がありましたが、同じ雰囲気でしたね。

 

黒崎

どうしてでしょう? 肺活量やパワーの関係でしょうか?

 

新田

エネルギーの注入を必要とするからでしょうか?息の合った管セクションの魅力を伝えられて、ビール片手に楽しんでいただけるような親近感のあるコンサートも始めたいですね。

 

 

文 ― 猪上杉子/ 写真撮影 ― 松井伴実

「フィルハーモニー」2011年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。