NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

松本健司

松本健司

クラリネット首席

まつもと・けんじ

神奈川県出身。国立音楽大学を経てパリ国立高等音楽院をレオン・ルブラン特別賞を得て卒業。第22 回トゥーロン国際音楽コンクールにおいて第3位、同年、第53 回ジュネーヴ国際音楽コンクール、ディプロマ受賞。これまでにクラリネットを角田晃、浜中浩一、二宮和子、竹森かほり、ミシェル・アリニョン、アラン・ダミアン、ジェローム・ジュリアン・ラフェリエールの各氏に、室内楽をピエール・ロラン・エマール、ダリア・ホヴォラの各氏に師事。2002 年7 月1日入団。首席クラリネット奏者。現在、室内オーケストラ「アルクス」、「トリオ・サンクァンシュ」のメンバーとして各地で精力的に演奏活動をしている。

 

クラリネットの音を初めて聴いてから一直線です

黒崎

小学生のときにクラリネットと出会われたそうですね。

 

松本

小学校にオーケストラが来て、フルート、オーボエ、クラリネットの順で楽器紹介をしてくれたんですが、クラリネットにだけときめいてしまいました。

 

黒崎

その前に何か楽器はされていたのですか。

 

松本

母がピアノの先生でしたから家にピアノはあって、たまに遊びで弾いてみたり、小さい頃はエレクトーンを習っていたので、自分のまわりには何かしら音楽がありました。

 

黒崎

五線紙の世界には慣れていたという感じですね。

 

松本

小学校4年生のとき初めてクラリネットの音を聴いて、実際に吹くことを始めて、野球少年がプロ野球選手になりたいと願うのと同じように、素直にプロを目指してみようと思いました。

 

黒崎

音を聴いてから一直線ですか。

 

松本

ええ。楽器を始めてすぐの頃、「N響アワー」を観て、背の高い細くてハンサムな男性がクラリネットを吹いていて、格好良いな、こういう風になりたいなと思いました。『フィルハーモニー』の楽員紹介で浜中浩一さんというお名前を確認して、この人に習えたらなと思い描いていました。地元の横須賀にN響が来たとき、楽屋に訪ねて行って御挨拶をして、その翌年から習うことになりました。中学1年のときです。

 

黒崎

行動力がありますね。

 

松本

とりあえず動きますね(笑)。

 

黒崎

パリの留学も実行されて。

 

松本

高校3年生のときからパリに留学したいと願っていました。大学に入学してすぐ浜中先生に「パリに行きます」と言ったら、「お前にはまだ早い」と。大学3年になって、ようやくパリ音楽院受験のお許しが出て、「試しに受けてみます」と言ったものの、このチャンスは逃してはいけないと固く思いました。

 

黒崎

今、少年時代からの憧れのN 響にいるというのはどういうお気持ちでしょう?

 

松本

不思議ですね。確かに浜中先生の最初のレッスンのときに、「N 響の首席奏者になりたいです」と宣言したのは覚えていますけど、まさか自分が本当にそうなるとは思いませんでした。

 

黒崎

N 響は演奏曲目数が多いと思いますが、準備をどのようにされているのですか。

 

松本

1~2週間前から録音を聴いて、楽譜をざっと見て、実際にパート譜を見ながら音を出すのは2~3日前くらいからです。

 

黒崎

イメージトレーニングをされるんですね。

 

松本

そうですね。頭の中で何がしたいのか考えます。何をすべきかは楽譜に書いてあるので、自分はここで何をしたいのかを見つけていきます。

 

黒崎

クラリネットの良さとはどういうところに?

 

松本

クラリネットは、発音体が特殊です。マウスピースにリードが付いているので、小さい音は限りなく小さく鳴らすことができます。それはクラリネットだけの魅力で、作曲家もそれを求めて楽譜を書いています。

 

黒崎

リードと言えばトリオでも活躍されていますが、この「サンクァンシュ」のいわれは?

 

松本

オーボエ、ファゴットがダブルリード、クラリネットがシングルリードの楽器なので、全部あわせてリードが5枚という意味のフランス語です。

 

黒崎

素敵な名前ですね。ところで、N 響で特に印象に残っている演奏会はありますか?

 

松本

チョン・ミョンフンさんが最初にN響を振ってサントリーホールで演奏したチャイコフスキーの《交響曲第4番》は、忘れられないです。いつもN響はひとつになっているのですが、あのときの団結している感じは特別でした。他にもデーヴィッド・ジンマンさんやサヴァリッシュ先生、忘れられない方ばかりです。

 

文 ― 柴辻純子/写真撮影 ― 笠井佳江
「フィルハーモニー」2012年5月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

黒崎めぐみ

聞き手

黒崎めぐみ

くろさき・めぐみ

NHKアナウンサー。神奈川県横浜市出身。東京大学卒業。1991年NHK入局。これまでに「紅白歌合戦」、「生活ほっとモーニング」、「世界びっくり旅行社」などの番組を担当。2006年、2007年、2009年にNHKホールで行われた「N響ほっとコンサート」では司会を務めた。2011年4月から2012年3月まで「N響アワー」に出演。趣味は舞台芸術鑑賞。