NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

黒田英実

黒田英実

打楽器

くろだ・ひでみ

大阪府出身。武蔵野音楽大学、同大大学院修了。第25回日本管打楽器コンクール第3位、パーカッション部門最高位。2014年7月1日入団。これまでに打楽器を安藤芳広、安藤淳子、小谷康夫の各氏に師事。

 

命のある音の繋がりを見つけたい

華恵

入団されて生活に変化はありましたか?

 

黒田

生活そのものはそこまで変わらないですが、伝統あるオーケストラなのでその歴史を汚さないようにとは考えるようになりました。打楽器パートには「出番帳」という戦前からのすべての演奏会の出番の記録があって、どんな楽器が必要だったか、楽員とエキストラの名前などのすべてが1公演も欠かさず記録してあるんですよ。それを見せていただいたら、名だたる指揮者の名前があって、今方々で活躍なさっている打楽器奏者の方がエキストラでいらしていた形跡があって。そこに自分の名前が連なることを光栄に思う反面、恐れ多いことだとも感じました。

 

華恵

話がさかのぼりますが、そもそも打楽器との出会いというのは?

 

黒田

抽選にはずれました。

 

華恵

何の抽選ですか?

 

黒田

中学校の吹奏楽部入部時のパート分けで、第1希望のホルンにも第2希望のサックスにもはずれて、かっこよかったドラムの先輩に憧れて第3希望に打楽器と書いたらすんなり打楽器となりました。高校でも経験者だからということで打楽器を続けましたが、顧問の先生の意向でコンクールには出ないという方針だったんです。100人以上いた部員全員で楽しく音楽をしたいという理由からで、そこで音楽をすることでたくさんの人と繋がれることが本当に素晴らしいし、幸せなことだという思いが確立しましたね。そしてその先を見てみたいなと思うようになりました。もっと突き詰めたらもっと素晴らしい世界があるんだろうな、そういう世界が見てみたいなと思って。それで音楽を真剣にやりたいと決意したのが高3の6月です。

 

華恵

そんなに遅く始めて間に合うのですか?リズムは幼い頃からの訓練が必要なのかと思っていましたが。

 

黒田

私は幼い頃には特別な音楽訓練は一切受けていないのです。でもそれを言い訳にしていたら始まらない、と思いながらここまで来ています。

 

華恵

努力されたんですね。

 

黒田

音楽をしたいという思いが強かったので、そこまで練習も苦ではなかったです。

 

華恵

では音大に入ってから、音楽を職業にしようという意識は芽生えたんですか?

 

黒田

職業にしようという志は、高3でやると決めた時から一応持っていたんですけれども、具体的にどういう形で、という段階には至っていなかったんです。オーケストラとはまったく縁がなかった地域に育って、その良さも全然知らなかったので。大学2年のときに先生に「何がやりたいのか自分でもよく分かりません。とにかく音楽がやりたいんですけれども、どのジャンルも大好きで1つに絞れない」という相談をした時に、「1つ1つのことを手を抜かずに自分の出せる力を尽くしてやっていたら、必ず一番向いているところに導いてもらえる」と言われたんです。その言葉を信じてミュージカル、ブラスバンド、アンサンブルといろいろなことをやっていって、そこでオーケストラの仕事もいただくようになり、ご縁があって今に至っています。

 

 

華恵

オーケストラにおける打楽器の良さは何ですか?

 

黒田

打楽器は、特にオーケストラの中だと1人では基本的に音楽が成立し難いんです。マリンバの独奏などもありますけれど、やっぱり大勢の奏者がいて、そこに参加して一緒の音楽に流れていけるというのが最大の魅力ですね。その上、オーケストラでの打楽器は、たった1音で音楽の流れを変えることができてしまう。それが一番深いなと思うところです。自分がそこまでのことができるかは、まだまだ勉強中なんですけれど。

 

華恵

オーケストラの打楽器は良い時も悪い時も目立ってしまうので、勇気がいるように見えます。

 

黒田

失敗したらばればれですからね。根性と度胸が必要ですね。これは日本だけでなく世界中のオーケストラの諸先輩方からのアドバイスですが、自分を信じるしかない、と。女性だからとか、背が低いからとか、手が小さいからとか、そういうことを言い訳にするよりは、自分の持っている力を100パーセント、いや120パーセント出すにはどうしたらいいかということを考えていきたいです。

 

華恵

今後N響の中でこういう音を出していきたいというテーマはありますか?

 

黒田

まだ私は今、目の前の音楽に向き合うことで精一杯なんですが、他の楽員の皆さんは曲の最後のことまで考えて今の音を出しているのがよく分かるんです。ですから打楽器で、ここはこうなってこう来てこう収まるというのがこの1音で分かる、というそういう音楽をするのが目標です。

 

華恵

音の向かうところを見るということでしょうか。

 

黒田

命のある音がどんどん誰かに繋がっていくのが明確に見えて、それがずっと最後まで繋がっていく、そんな音のオーラをひしひし感じるんですよ。そういう音を私も出したいなと日々思いながらやっています。

 

写真撮影 ― 藤本史昭  撮影協力 ― サントリーホール

2015年2月取材 ※記事の内容およびプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。2014年、東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。