NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

楽員インタビュー

横山俊朗

横山俊朗

ヴァイオリン

よこやま・としろう

東京都生まれ。東京音楽大学付属高等学校、東京音楽大学卒業。これまでに松本善三、田中千香士の両氏に師事。田中千香士合奏団メンバー。N響メンバーによるアンサンブルグループ、「アンサンブル・クラルテ」の第1ヴァイオリン、アレンジを担当。現在、東京音楽大学・同付属高等学校で後進の指導にあたる。1986年11月1日入団。第2ヴァイオリン次席奏者。

 

多くの価値観を持つことも楽しいですよ

華恵

ヴァイオリンとの出会いは早かったのですか?

 

横山

父が音楽教室を自宅で開いていたので5歳から始めましたが、当時は嫌々ながらでした。好きだったのは電気工作で、将来は電気屋さんかな?なんて考えていました。

 

華恵

ヴァイオリンの道に進まれてよかったですか?

 

横山

今では電気のことも自分の音楽活動に役に立っているので、良かったと思っています。例えば、このN響メンバーによるグループ「アンサンブル・クラルテ」のCDは、すべて私が所有している機材で録音しています。マルチトラック録音にも昔から興味があったので、いろいろと試みてきました。マイクを十何本も立てて録音して、自分でトラックダウン、編集、マスタリングしています。また、真空管にも興味があり、その音色を生かすために録音機材に使用しています。さらに、このCDジャケットも僕が撮影した写真を使って自分で作りました。また、自分の演奏会ではチラシやチケットを自分でデザインしたりもするんですよ。

 


 

華恵

多才なんですね。他にも電気の専門知識が役立っている場面はありますか?

 

横山

NHK札幌放送局主催の「NHK親子のはじめてクラシック」というコンサートに登場した猫の人形は私が作ったものなんです。

 

華恵

わ、猫が演奏に合わせて、「ニャー」って鳴いたり、カスタネットを叩くんですね。

 


 

横山

「ニャー」と鳴かせて首を振るのは電気仕掛けですが、カスタネットや鉄琴は、チューブの中にワイヤーを通してペダルで操作しているんです。それを、ヴァイオリンを演奏しながらやるのは実は大変なんですけどね…。鳴き声は、音声を記憶させる基盤を使い、バッテリーで駆動するアンプを組み込んでステージで大きな声で鳴くようになっているんです。

 

華恵

すごい技術をお持ちなんですね。

 

横山

製作には1年ぐらいかかりました。

 

華恵

ヴァイオリンを演奏することと、こうした技術を駆使することは同等なんですか?

 

横山

もちろん、現在の私にとって、ヴァイオリンを演奏することが中心です。でも、より楽しい演奏会をやることで音楽に親しんでいただきたい、というのが狙いです。そこで、自分の工作技術を使い、いろいろなアイデアを実現しているという感じですね。
最近、音楽高校の学生に講義をすることがあったのですが、手塚治虫さんを例に挙げ、彼が医学の勉強をしていたために「ブラック・ジャック」が生まれたこと…現代のダブル・メジャーの利点の話をしました。2つ以上の専門があると、その間のことができるという考えです。私の場合は音楽と電気なんですけどね。

 

華恵

これからどのようにその発想を生かしていかれるのでしょうか?

 

横山

私が自分の演奏を録音する理由の1つとして、演奏レベルの維持があります。自分自身で録音した音源を聴くことで、常にそれ以上の演奏を心がけることにつなげています。また、母校での指導では、音楽教育や音楽に携わるスタイルを考えることを、学生達に伝えていきたいと考えています。今までは独自の教育体系でやってきた音大が、例えば美術の学校と提携したら、お互い補い合って面白いコラボレーションができるのじゃないだろうか、などと考えています。また音大の中でレコーディングや音響技術や録音編集の講座はできないだろうか、とも考えます。音大生が録音したCDのジャケット・デザインは美大生に頼むように連携してはどうでしょう。もちろん、音楽家は1つのことを深く研究するのも大切ですが、いろいろな角度から考えることも重要だと思います。また、他の専門家とのつながりを持つことでより広い音楽に対する感覚を持つことができるとも考えます。

 

写真撮影 ― 藤本史昭

2014年5月取材 ※記事の内容およびプロフィールは取材当時のものです。

 

N響ライブラリー

華恵

聞き手

華恵

はなえ

1991年アメリカ生まれ。6歳から日本に住む。2003年、12歳で『小学生日記』を刊行し、エッセイストとしてデビュー。NHK BSプレミアム「世界遺産~一万年の叙事詩~」でのナビゲーター、連載エッセイなど、幅広く活躍中。2014年、東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。