NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

N響が贈る芳醇なひととき

コートを脱いで出かけよう

~コンサート・ファッションのあれこれ~ 

 寒い冬が終わり春の訪れとともに、街のあちこちで木々は緑に色づき、花々が順番に咲き始めます。春を代表する花といえば、もちろん桜ですが、花が散った後にあらわれる若葉の色はまさに5月のシンボル。「葉桜」は、花とはまたちがった美しい景色に街を染め上げます。

 葉桜の季節はまた、色々なところに出かけたくなるもの。実際、桜が満開の頃は、「花冷え」という言葉があるように気温が低い日も多く、薄手のスプリングコートを着ている女性も少なくありません。冬のコートとはちがって、色もパステルカラーなど春らしいものが多く(今年はベージュが流行でした)、着ていて楽しいスプリングコートですが、これを脱ぐ季節こそ、本格的な行楽シーズン。この時期都会で過ごすなら、やっぱりコンサートがオススメです。その理由のひとつは、何といっても荷物が少なく手軽に出かけられること。そして、軽やかなファッションを楽しめるという点も女性には嬉しいものです。

 今回は少し視点を変えて、ファッションという側面からコンサートの楽しみ方を考えてみることにいたしましょう。

 

まずはリラックスできる服装で

 定期公演のような通常のコンサートであれば、特にドレスコードはありません。スーツでもジーンズでも自分の好きな格好でOK。初心者の方からよく「どんな服装で行けばいいのか」というご質問をいただきますが、せっかく音楽を楽しみにいくのですから、リラックスできる服装がいちばんなのではないでしょうか。コンサートの間中、ウエストの締めつけが気になって(!)音楽に集中できなかった、というのではいかにももったいないですから。

 ただし「音を聴く場」であるということを考えると、常識の範囲でいくつかのNGが考えられます。まず、下駄など音の出やすい履物は避けた方が無難でしょう。夏になると女性はよくミュールを履きますが、時々サイズや形が足にあっていないのか、踵(かかと)が上がってしまってパカパカと音を立てている人に会うことがあります。ミュールを履くときはそのあたりにも注意しておくといいと思います(サイズのあっていないミュールは足も痛くなりますし)。他には、あまりジャラジャラしたアクセサリーは、コンサートの最中に金属がこすれる音がすることがあるので気をつけましょう。

 

オシャレを楽しむ

 コンサートを「非日常の体験」と考えるなら、普段とはちがうオシャレをしていくと一層気分が盛り上がります。デートでコンサートに行く、などのケースがこれに相当します(笑)。例えば、普段はスーツを着ない男性のスーツ姿にグッとくる女性は多いもの。ここはひとつ、スーツにネクタイでバシッときめてみましょう。スーツの色に決まりはありませんが、自分の体型に合った仕立てのよいスーツは男性を一段格上にみせます。タイピンやカフスはお好みで。そして靴はピカピカに磨いておきましょう。どんなに高価なスーツできめても、靴が泥だらけだったら台無しです。

 女性はぜひ、「自分をいちばん美しくみせる服」を探してください。よくわからない場合は、「合コン」や「結婚式の二次会」といったシーンを想像してみて。そう、あまりにキメキメというよりも、上品で少し華やかな「よそゆきの服」というのがコンサート・デートには効果的な気がします。アクセサリーも忘れずに(ただし控えめな方が好ましいのはさきほど述べた通りです)。香水は好みによりますが、劇場の客席は隣と距離が近いので、くれぐれもつけすぎにはご用心を。

 

コート、バッグ、etc…

 冬場の重くて厚手のコートは、ぜひクロークに預けてください。座席で抱えているとふとした拍子に膝からずり落ちたり、隣の人の肘に触れたりするかもしれません。また、休憩時間に席から離れる時にも、コートがない方が断然スマートです。

 女性の場合、バッグのチョイスも重要。できれば小さなバッグで素敵にきめたいのですが、小さすぎると会場で購入したプログラムや入り口でもらったチラシなどが入りません。全部ガバッと入る大きめバッグにするか、それともエコバッグなどのセカンドバッグを持つのもいいかもしれませんね。例えば無地でマチがしっかりしたものならオシャレの邪魔をしませんし、たくさんのチラシを入れても型くずれしないので便利です。

 クラシックのコンサートといっても、決して堅苦しく考える必要はありません。友だちとご飯を食べにいく、恋人とデートをする、そんなシチュエーションと同じように、ぜひファッションからもコンサートという空間を楽しんでみてください。

 

(室田尚子/音楽評論家)

 



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