NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

活動報告

2013年10月2日

ヨーロッパ公演2013 ツアー・レポート(3)
ラインガウ音楽祭~メラーノ音楽祭

 

 この夏、N響は2005年以来8年ぶりとなるヨーロッパ公演に出かけました。オーストリア、ドイツ、イタリアの4都市で4公演を果たした模様を、ミニ・インタビューやこぼれ話も交えてお届けします。

 

 

【8月26日】

 オーストリアのリンツを後に、空路でドイツ・フランクフルトへと飛び、ヘッセン州ウィースバーデンの地へと到着しました。前夜のザルツブルク音楽祭での成功が胸に響き、意気揚々の面持ちです。ウィースバーデンはライン川沿いの歴史ある街。高級温泉保養地として知られ、温泉の起源はローマ時代にさかのぼり、ゲーテ、ドストエフスキーといった文豪や、ワーグナー、ブラームスらも保養に訪れたとのこと。さっそくスパ施設へと向かう楽員の姿もありました。温泉とビールとドイツ料理で疲れを癒して明日の演奏会に備えます。

 

ウィースバーデンでの1コマ

ウィースバーデンでの1コマ

 

 

【8月27日】

 ウィースバーデンは夏の間、ヨーロッパの有名なクラシックの国際フェスティヴァル「ラインガウ音楽祭」の開催地としても大きな賑わいを見せます。「ラインガウ音楽祭」の会場は、「クアハウス・ウィースバーデン」でした。クアハウスは歴史的建造物で、ドーム型の高い天井の装飾と美しいステンドグラスの窓、貝殻の装飾が施された円柱に優雅な風格を感じます。舞台も金色に輝く浮き彫りで飾られ、目を見張るほど壮麗です。楽屋として使われた部屋も大理石の床や柱、天井の装飾が豪華な雰囲気です。

 

クアハウスの外観

クアハウスの外観

クアハウスの楽屋

クアハウスの楽屋

 

 

 軽快なウェーバー《歌劇「オイリアンテ」序曲》でコンサートの幕が開き、ラロ《スペイン交響曲》では、幾度もレーピンをカーテンコールに呼び出すほどの大喝采が続きました。休憩時間には公園に続く庭に出て、涼しい風で熱気を冷ましながら歓談する人も。休憩後のチャイコフスキー《交響曲第5番》の圧巻のフィナーレが鳴り響くと「ブラヴォー!」の声が次々とわき上がりました。アンコールに応えてグリンカ《歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲》が颯爽と演奏されると、会場は陶然となって、スタンディング・オベーションでの大きな拍手に包まれました。

 

休憩を庭で過ごす人も

休憩を庭で過ごす人も

 

 

【8月28日】

 翌日は再び空路でイタリア・ヴェローナ空港へと飛び、ツアー最後の公演地メラーノを目指しました。宿泊地はボルツァーノ。ヴェローナからボルツァーノまでのバスの車窓風景はなだらかな山々とぶどう畑やトマト畑。明るい陽の光がさんさんと降りかかります。南チロル地方と呼ばれるこの地は、かつてはオーストリアだったため、今もイタリア語とドイツ語の両方が話され、文化も混じりあっています。イタリア語とドイツ語併記のメニューでイタリア料理やチロル料理の夕げを楽しんだようです。

 

空路で移動

空路で移動

 

 

【8月29日】

 メラーノは高級温泉保養地として知られ、テルメ(温泉治療)施設や羊毛織物やワインなどの特産品を求める観光客で大賑わい。街の中心にある「クアハウス・メラーノ」が「メラーノ音楽祭」の会場でした。

 

メラーノの風景

メラーノの風景

 

クアハウス・メラーノの外観

クアハウス・メラーノの外観

ドイツ語、イタリア語、英語が併記された表示

ドイツ語、イタリア語、英語が併記された表示

 

 

 今回のヨーロッパ・ツアーは3か国4都市を巡るもの。移動距離や環境の変化への調整に苦慮したのは楽員達だけではありません。楽器を運び、公演会場の準備を整えるステージ・スタッフ達も苦労を乗り越え、この最終公演を迎えていました。

 「トラックの運転手さんとすっかり仲良くなりました。こうしたコミュニケーションが何事も順調に進めるためには大切になってくるんですよ」と話すステージ・マネージャーの多戸章人。3月に各会場を下見に訪れ、綿密にチェックしたことが役立ったとのこと。「図面を見ただけでは想像できないことがありますからね。例えばザルツブルクのフェルゼンライトシューレは、現場検分をもとに、通常の4段の配置を3段に組むことを決断しました。打楽器の配置の曲間の移動も、現地の状況をシミュレーションして備えました。今日の公演が無事終了したら、83ケースの楽器を送り出して成田で受け取るところまでが任務。まだまだ気をゆるせませんね」。

 

メラーノ会場への楽器搬入の様子

メラーノ会場への楽器搬入の様子

 

メラーノ会場前でのステージ・スタッフ

メラーノ会場前でのステージ・スタッフ

 

 20時を回り、建物の正面2階バルコニーからファンファーレが開演を告げると、バカンスの社交場らしい華やかな装いの聴衆で会場は満席となりました。ついにヨーロッパ・ツアー最後を飾るコンサートの開始です。

  熱いアンコールに応えてグリンカ《歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲》が颯爽と演奏されると、大きな称賛の拍手が会場を包みました。

 終演後の聴衆からは、「ベリッシマ(素晴らしい)。日本のオーケストラを初めて聴きましたが、こんなに表現力があるとは!感動しました」「新聞の前評判を読んで、ローマから来ました。期待通りで楽しめました」といった賛辞の声が聞かれました。

 

開演のファンファーレが鳴るホール

開演のファンファーレが鳴るホール

 

 

 最終公演を終えてボルツァーノの宿に戻ると、「打ち上げ」の宴が。楽員達はくつろいだ満足気な表情でした。「誰もケガも病気もなく無事にやり遂げられてよかった」とコンサートマスターの堀正文。楽員達の声は――「楽しくやりがいのあるツアーだった」「ヨーロッパの各都市の日常の音を聞いて演奏をするのは心地よかった」「特段の気負いはなかった。いつも通りに演奏できた」「いやいや、やはり相当に気合いが入っていた」「毎年ザルツブルクに行きたい」「若い人達にとっては大きな経験になったと思う」などなど。夜ふけまで美酒が酌み交わされました。

 

打ち上げにて乾杯

打ち上げにて乾杯

 

 

 

 

 こうしてヨーロッパ公演は大成功の裡に幕を閉じ、翌日には大きな成果を携えて、日本への帰路に着きました。

 

(取材:「フィルハーモニー」編集部)

 

 

「ラインガウ音楽祭」の模様はこちら

「メラーノ音楽祭」の模様はこちら

 

 

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