NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

活動報告

2013年10月2日

ヨーロッパ公演2013 ツアー・レポート(2)
ザルツブルク音楽祭

 

 この夏、N響は2005年以来8年ぶりとなるヨーロッパ公演に出かけました。オーストリア、ドイツ、イタリアの4都市で4公演を果たした模様を、ミニ・インタビューやこぼれ話も交えてお届けします。

 

 

【8月25日】

 リンツの宿泊先から2時間がかりでバス移動。ザルツブルクは岩山に囲まれた街でした。そもそもザルツは「塩」、ブルクは「砦」の意味。岩塩の売買によって経済が成り立っていた歴史があります。会場の「フェルゼンライトシューレ」に到着したN響一行が驚かされたのが、ステージそのものの周囲が岩壁でできていること。音響も独特のものであろうと想像されます。かつては大司教の馬術学校と狩猟のために使われていた建物だそうで、青く照明が施されてファンタジックな印象を与える、三層に連なったアーチ型の小さなドーム(96個あるとか)も、馬術学校当時の観客席だったということです。映画「サウンド・オブ・ミュージック」でのクライマックス場面、トラップ一家がコンテストに出場して歌い、優勝し、ナチスの手から逃げたシーンのロケ地でもあります。その風景がよぎり、感慨深く感じた楽員も多くいたようです。

 

「フェルゼンライトシューレ」外観

「フェルゼンライトシューレ」外観

リハーサル後のステージ

リハーサル後のステージ

 

ステージの岩壁

ステージの岩壁

岩でできたステージへの階段

岩でできたステージへの階段

 

 そしてさらに驚かされたのは、ステージから楽屋までの入り組んだ洞窟のような迷路。迷子にならないようにと、スタッフが各ポイントに矢印付きの紙を貼り出しました。

 

楽屋への迷路

楽屋への迷路

 

 独特の緊張感を保ちながら、リハーサルが終了。細川俊夫氏も世界初演作品の仕上がり具合に満足気な表情です。

 「じつは今日のプログラムの武満徹さんの《ノヴェンバー・ステップス》こそ、私が中学生のときにFMラジオで聴いて感動して、こんな素晴らしい曲が書ける作曲家になりたいと決意させてくれた作品です。今日初めて、こんな大舞台で、同じプログラムで自作が演奏される機会が巡ってきました。自作の世界初演もさることながら、この巡り合わせが嬉しくてなりません。興奮しています」と細川氏。

 

ザルツブルクでの1コマ

ザルツブルクでの1コマ

 

ザルツブルクの風景

ザルツブルクの風景

 

 誰もが期待する公演の幕が開きました。世界中から訪れた数多くの聴衆の中には、この日のマチネ公演で演奏したベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・芸術監督のサイモン・ラトル氏や、コンサートマスターの樫本大進氏の顔も見られました。

 華やいだ会場の雰囲気が、柿堺香の尺八の音で緊迫感みなぎるものに一変。中村鶴城の琵琶、そしてオーケストラによる武満徹《ノヴェンバー・ステップス》の演奏は、音楽の聖地に捧げる日本のオーケストラからのプロローグに感じました。

  ザルツブルク音楽祭から委嘱された細川俊夫《ソプラノとオーケストラのための「嘆き」》の世界初演も大成功に終わり、喝采に包まれました。細川氏も壇上に招かれて、ソプラノのアンナ・プロハスカさんとともに熱いカーテンコールに応え、喜びの表情を見せました。後半のベルリオーズ《幻想交響曲》では、シャルル・デュトワがオーケストラから鮮やかな色彩を引き出し、最後の音が鳴り止むか止まない間に「ブラヴォー!」がわき起こりました。この日のアンコールはビゼー《「アルルの女」組曲 第2番》から〈ファランドール〉。軽快な響きが会場に弾み、拍手に応えるオーケストラの姿が誇らしげに見えます。N響の歴史にまた輝かしい1ページが刻まれた、記念すべき一夜となりました。

 

客席で拍手を送るサイモン・ラトル氏と細川俊夫氏 © Wolfgang Lienbacher

客席で拍手を送るサイモン・ラトル氏と細川俊夫氏 © Wolfgang Lienbacher

 

 

  熱気冷めやらぬなか、終演後の楽屋に祝福に駆けつけた樫本大進氏は、「すばらしい演奏でした。もちろん急に変貌したのではなく、N響の当たり前の実力が示せただけなのだと思いますが。演奏の合間、合間に、隣に座ったBuschatz(Andreas Buschatz ベルリン・フィルのコンサートマスター)と感想を交わし合いながら、感激して聴いていました」と語ってくれました。

 また、コンサートマスターの堀正文は、NHKのインタビューに答え、「念願のザルツブルク音楽祭に出られて嬉しい。お客さんの反応もとてもよかった」と語りました。

 N響一同がリンツの宿に帰ったのは深夜1時を回った頃でした。おそらくは誰もが静かな興奮と達成感に満ち足りて眠りに落ちたのではないでしょうか。

 

終演後のホール外観

終演後のホール外観

 

(取材:「フィルハーモニー」編集部)

 

 

「ザルツブルク音楽祭」の模様はこちら

 

 

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