NHK交響楽団
NHK Symphony Orchestra, Tokyo

 

活動報告

2011年4月27日

北米公演2011

 

 

 

未曾有の大地震と大津波、さらに原発の事故が東日本を襲った3月11日の翌12日。交通網がダウンするなか、NHK交響楽団一行は5年ぶり7回目、12日間の北米ツアーに向け、予定を大幅に遅れて成田空港を飛び立ちました。

 

タクトを振るのはN響首席客演指揮者アンドレ・プレヴィン。まだ被害の深刻さも定かではないなか、いつにない緊張に包まれて最初に訪れた首都ワシントンでは、武満徹《グリーン》、エルガー《チェロ協奏曲》、プロコフィエフ《交響曲第5番》というプログラムでストラスモア・ミュージック・センターでの公演に臨みました。

主催者からのお悔やみと激励のスピーチに続いて、マエストロ・プレヴィンの提案で犠牲になられた方々にバッハの≪G線上のアリア≫が献奏されました。また、野島理事長がアメリカ市民への感謝のスピーチを行いました(これらは4会場すべてで行われました)。

大災害に苦しむ日本を心配する客席の思いと、「降りかかった災難を克服する勇気」(ワシントン・ポスト紙の評から)をふりしぼった楽員たちの熱演とがひとつになり、会場には日頃の公演とはまた異なる緊密な一体感が醸しだされました。

本番当日には、5人の楽員が市内のヘンドリー小学校を訪問。日本について学んでいる生徒30人ほどを前に、ハイドンの木管五重奏曲などを披露したほか、楽器の紹介をまじえながら活発な質問にも答えるなど、楽しい国際交流が実現しました。

また、エルガーでソロをつとめた若手ドイツ人チェリストのダニエル・ミュラー・ショットと、第1コンサートマスター篠崎史紀が、ストラスモアのジュニア・オーケストラを表敬訪問するというひとこまも。

 

ストラスモア・ミュージック・センター

ストラスモア・ミュージック・センター

 

ヘンドリー小学校

ヘンドリー小学校

 

ふたつめの公演地は、まだ雪の残るカナダのモントリオール。冬の寒さを避けるために地下街がよく発達しています。18日の公演は、日本総領事館の開設50周年記念行事のフィナーレを飾って開催されたもので、会場は多目的ホールとして建てられたモダンなプラス・デ・ザール。

武満徹《グリーン》、プロコフィエフ《交響曲第5番》、そして名歌手キリ・テ・カナワを迎えてのR.シュトラウス《4つの最後の歌》というプログラムを披露しました。

 

プラス・デ・ザール

プラス・デ・ザール

 

 

 

キリ・テ・カナワ ©Philippe Larocque

キリ・テ・カナワ ©Philippe Larocque

 

続く20日の会場はニューヨーク州立大学パーチェス校のパフォーミング・アーツ・センター。パーチェスはマンハッタンから30kmほど北に位置するベッドタウンです。

ワシントンと同じプログラムが演奏されたこの日の模様は、去る4月3日の「N響アワー」で一部放送されましたが、ここでも客席からの熱い拍手が終演後も長いあいだ鳴り止みませんでした。

 

パフォーミング・アーツ・センター

パフォーミング・アーツ・センター

 

ダニエル・ミュラー・ショット ©NHK

ダニエル・ミュラー・ショット ©NHK

 

ツアーの締めくくりは、モントリオールと同じプログラムによるカーネギー・ホール公演です。小澤征爾を芸術監督に迎えて日本の文化を世界に紹介する同ホールのイヴェント「JAPAN NYC」に招待されたもので、ニューヨーク市民のN響への高い関心も反映してか、この日のチケットは完売。

故国への思いを一音一音に込めた祈りにも近い演奏が聴衆の心にしみていきます。そして、重くまとわりつく不安と葛藤を振り払うかのような心のこもった演奏が、120年の伝統を誇る音楽の殿堂に響き渡りました。「弦楽器の響きは光り輝くようであった」とは、日頃手厳しいニューヨーク・タイムズ紙の評です。

終演後には「魂に響く音楽をありがとう」「本当のプロフェッショナルです」と、称賛の言葉をスタッフに直接声をかけてくれる方も多く、音楽にこめた思いが確かに伝わったことを実感しました。

 

カーネギー・ホール

カーネギー・ホール

 

アンドレ・プレヴィン ©NHK

アンドレ・プレヴィン ©NHK

 

このツアーでは行く先々で、共演者をはじめとする関係者のみなさんや聴衆の方々から、温かいお見舞いの言葉とともに熱烈な歓迎を受け、日本に残してきた家族や友人たちへの思いに揺れる楽員たちを大いに励ましてくれました。

各会場ではアメリカ・カナダの赤十字や現地の日本人会などがそれぞれに募金活動を展開。アメリカは寄付文化の根付いている国とはいえ、熱演に応えるかのように募金箱が埋まっていきました。

 

震災直後の日本を、世界に向けて最初に発信する大きなきっかけとなった今回の北米公演は、テレビ、新聞など現地メディアの注目も集め、数多くの取材を受けました。

日本が不幸にも抱えることになった困難と、それに立ち向かう日本人の姿を伝え、さらに大きく広がる支援の輪に対して感謝の気持ちを直接届けるという、大役をはからずも果たすことになったこのツアーは、N響にとっても、日本の音楽界にとっても、これまでの外国公演とは全く違う意味をもつものになったと言えるでしょう。

 

 

モントリオール会場での募金活動

モントリオール会場での募金活動

 

パーチェス会場では千羽鶴を折るコーナーも

パーチェス会場では千羽鶴を折るコーナーも

 

 

PROGRAM

【 プログラムA 】

武満 徹/グリーン

エルガー/チェロ協奏曲 ホ短調 作品85

プロコフィエフ/交響曲 第5番 変ロ長調 作品100

 

【 プログラムB 】

武満 徹/グリーン

R.シュトラウス/4つの最後の歌

プロコフィエフ/交響曲 第5番 変ロ長調 作品100

 

指揮:アンドレ・プレヴィン

チェロ:ダニエル・ミュラー・ショット

ソプラノ :キリ・テ・カナワ

 

 

日時・会場

■2011年3月16日(水) 8:00PM プログラム A

ワシントンD. C.

The Music Center at Strathmore [Concert Hall]

Presented by Washington Performing Arts Society

 

■2011年3月18日(金) 8:00PM プログラム B

モントリオール

La Place des Arts, Québec [Salle Wilfrid-Pelletier]

Série classique de la Place des Arts

在モントリオール日本国総領事館開設50周年記念

 

■2011年3月20日(日) 3:00PM プログラム A

パーチェス

The Performing Arts Center [Concert Hall]

Festival of Orchestras

 

■2011年3月21日(月) 8:00PM プログラム B

ニューヨーク

Carnegie Hall [Stern Auditorium/Perelman Stage]

JapanNYC Japan’s Great Orchestras I

 

 

 

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